「冒険活劇の王道、ここにあり」プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂 かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
冒険活劇の王道、ここにあり
拙ブログより抜粋で。
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世界観的にはよくある古代ファンタジーものだが、“時間の砂”が本領を発揮するクライマックス以外は魔法が飛び交うような神秘性はあまり感じられなくて、奔放な王子と高飛車な王女の滑稽な掛け合いと華麗なアクションを楽しむ冒険エンターテイメントという趣。
VFXの成熟によってこの手のファンタジーもの、古代・中世ものが次々作られるようになったが、実写映画は身体を張ってなんぼなんだという意気込みを感じる力作だ。
冒頭の少年ダスタンの追跡劇を手始めに、すぐさまアラムート侵攻での攻防と、手に汗握るアクションで序盤から大いに盛り上がる。
もちろん派手なアクションもVFXあっての賜物ではあるのだが、役者の演技の延長上で、それを補うのが視覚効果=ヴィジュアル・エフェクトという、本来こうあるべき演出のさじ加減が素晴らしい。
VFXを駆使した美術はあくまで世界観を裏打ちする背景、カメラはきっちり演者を追う。
モロッコ・ロケにこだわった景観の美しさがあってこそCGによるお城の美しさも引き立つし、中盤に登場するダチョウ・レースにいたってはCGとかまったく関係なく、“生”の可笑しみで笑わせてくれる。
スクリーンに表立って出てくることはないけれど、スタッフ&キャストの苦労が忍ばれるシーンてのは、個人的にも大好きだ。
(中略)
あえて難を言えば、鍵を握る“時間の砂”が予想通りのご都合主義な小道具にしかなっていない、ファンタジー映画としてのもの足りなさ。
時間をいじること自体、ご都合主義と紙一重なので、ここでもう一ひねり予想を覆す大仕掛けを用意してくれなければ傑作にはなりえない。
思い返してみれば、時間を操るSF映画やファンタジー映画の傑作は、必ずその点での工夫があるんだよね。
ドラマに深みを求めるような内容ではないし、ちょっと駆け足ぎみの後半の展開も気になったけれど、スクリーンで観てこそのアクションは見応えがあり、いい意味で無難にまとめられた手堅い冒険ファンタジー映画。
単刀直入なタイトル「プリンス・オブ・ペルシャ」=“ペルシャ王国の王子”同様、「冒険活劇の王道、ここにあり」といった感じで、映画館で映画を観ることの愉しさを覚えた頃のワクワク感を思い起こさせてくれる良作でした。