「アクション薄めなのは残念だけど、なかなかの出来の社会派SFミステリー[修正]」サロゲート 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
アクション薄めなのは残念だけど、なかなかの出来の社会派SFミステリー[修正]
[文章の一部を丸々コピペし忘れていたのに今更ながら気付いて修正]
容姿を自由に変えられ、
欲望のままに行動しても命の危険に晒されることは絶対に無い——
サロゲートの普及した未来社会は、外出せずともネット上で
世界に介入できるようになった現代社会と見事にダブって見える
(ペンネームで好き勝手言っている僕自身も無関係じゃない訳で)。
特に、壊されても壊されても再投入されるサロゲート兵士が登場するシーンは、
短いながらも命の価値が希薄になった世の中を強烈に印象付けてかなり不気味。
映画が訴えるのは、血肉の通った人間と接する事の大切さ。
何の変換も修正もされない、傷だらけで情けない姿を互いが認め合うこと。
この物語の主人公に強烈な“生身感”を持つブルース・ウィリスを選んだのは
完璧なチョイスだったと思う。彼が中盤で見せる涙ながらの訴えには、
心を動かされずにはいられない
(つくづく味のある俳優さんになってきたなぁ)。
そんな社会的なテーマも盛り込みつつ、
エンタメ作品としても抜かりが無いのがこの映画の良い所。
サロゲートとサロゲート操縦者がコロコロ入れ替わるので誰が誰だか
混乱したけど、サロゲート殺人を巡って二転三転する展開はなかなか先を読ませず、
SFミステリーとして見応え十分である。
そんで、ここからが不満点。
監督のジョナサン・モストウは『ブレーキダウン』『U571』『T3』てな具合に、
メカを絡めた重量感のあるアクションが得意中の得意と伺える。
今回も物語の大きな要素がロボットであり、そこに未だダイハード野郎の
印象が強いブルース・ウィリスが加わるのだから、やはり骨太で大掛かりな
アクションを期待してしまう。だけど残念ながらアクション要素は随分と薄めだ。
サロゲートと人間のチェイスシーンとかはなかなかの迫力で面白いのに……短い。
アクションに期待する気持ちもあっただけに、
個人的には今一つ食い足りなかった。
それとジョン・カーペンター監督のあの映画を彷彿とさせるラストは好きだが、
主人公に最後の選択をさせる動機はまだまだ随分弱く感じる。
ラダ・ミッチェル演じる主人公の相棒刑事も、なんか扱いが雑な気が……。
という訳で、内容の割に上映時間がタイトな為か、その分アクションやキャラの
心理描写に物足りない印象は受けるが、ミステリーとしてなかなかの出来映え。
楽しめると思いますよ。
<2010/1/24観賞>