劇場公開日 2010年7月23日

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「いま自分がいる『世界』は、夢?現実?」インセプション 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5いま自分がいる『世界』は、夢?現実?

2010年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン最新作。ディカプリオと渡辺謙が共演したことでも話題の作品。

話題はそこだけではありません。映画の冒頭のシーンは、新幹線車内。この作品は、東京で撮影が開始されたんですよねぇ。こう言うハリウッド映画でも、もっと東京や日本での撮影が増えると良いと思います。ですが・・・、老いたサイトーが、コブと対峙するシーン。ああいうのが、いまだにアメリカ人の日本感なんですかねぇ。日本人から見ると、どう見ても中国風で、滑稽でしか無いんですが・・・。こう言う様な、誤ったアメリカ人の日本感を払拭する意味でも、日本での撮影を増やしていって欲しいと思います。それでも、近代的な日本の風景は、CGだと思われたりして(苦笑)。

やはり、(日本人にとって)この作品での重要なポイントは、渡辺謙ですよね。今回は、コブに仕事を依頼する役というところで、物語的に重要な位置を占めていて存在感十分。今や、“世界の”と言う冠詞を付けて Ken Watanabe と言う表記でも良いかもしれません。いやぁ、素晴らしいです。彼には、もっと活躍して欲しいですね。

一方、主演のディカプリオ。彼は、『シャッター アイランド』もそうでしたが、この所、心に問題を持つ人物の役が多いですね。そう言えば、『シャッター アイランド』も、妻との関係に問題がある役どころでした。悩んだような、額に皺を寄せる表情の演技が、だんだんとはまり役になってきている気がします(苦笑)。

コブの妻モル役のマリオン・コティヤール。『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』以降、最近の彼女は大活躍ですね。過去の彼女の出演作品を調べてみたら、 TAXiのリリー役で有ったことを発見! って言うか、最近彼女は、コケティッシュな雰囲気の役どころが多い気がしますが、TAXiでのリリーは、それとは全く違うので、私は全然気が付いていませんでした。そして今回も、やはりコケティッシュな女性。コブの心の闇と言っても良いかもしれません。そんなポジションを上手く演じています。

意外な存在感を示していたのが、アドリアネを演じたエレン・ペイジ。若いながらも、コブの心の奥に潜む闇を知り、理解するという役割を見事に演じています。相手に共感するという意味では、そう言う役はやはり女性で有るのが良いと思うので、そういう意味でも良かったと思います。。ところで彼女は、カナダ・ハリファクスの出身だそうなんですが、だからパリ在住の学生と言う設定だったんですかね? 気になるところです。

パリの街がロールアップされたり、海岸直ぐ近くにある崩れ落ちるビルがあったり、あるいは、同じような形状の超高層ビルが林立していたりと、夢の世界の不思議な映像が繰り返されます。もちろんCGですが、上手いですねぇ。

全般的には、いい作品ですが、ツッコミどころもあります。ツッコミどころの際たるところは、クライマックスで出てきます。この物語では、夢のなかで死んだら夢から覚めると言う設定です。しかし、クライマックスになると、強力な鎮静剤を使っているので、夢の中で死んだら、深い潜在意識の底に落ちていくと言う設定になってしまいます。まぁ、そこまでは良いです。でも、夢のなかで死んでも、更に一段下の夢の世界に行って戻ってくれば大丈夫という話が突然出てくるというのは、究極の後出しジャンケンじゃないかなぁ。推理小説だったら、徹底的に非難される描き方です。あんまりこの辺りの事をセリフで描くと、説明的になりすぎるという話もありますが、この描き方はちょっと気になりました。

さて、映画の結末ですが、この手の話には有りがちな結末・・・と言ったら、怒られるでしょうか。そう言えば、また例に引いてしまいますが、『シャッター アイランド』も、まぁ、同じ様な感じの結末でした。うーん、ああ言う結末がいいんですかね、やっぱり。でも、と言う事は、サイトーは・・・。

ところ所ツッコミどころはありますが、映像的にも、話的にも面白い作品です。そして、渡辺謙の活躍も見所です。

勝手な評論家