「観客がインセプトされる」インセプション DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
観客がインセプトされる
映画「インセプション」を観た。原題「INCEPTION」
監督:クリストファー ノーラン
キャスト
コブ:レオナルド デカプリオ
サイトウ:渡辺謙
妻マル:マリオン コテイアード
ロバート:キリアン マーフィ
アーサー:ジョセフ ゴードンレヴィ
アリアドネ:エレン ペイジ
(なお、アリアドネとは、ギリシャ神話で迷宮から脱出することを教える神様の名前)
ストーリーは
眠っている人の無意識の頭の中に潜入して その人のアイデアや情報を盗み出す という特殊な能力を持つ企業スパイ、コブ(レオナルド デカプリオ)は 重要犯罪人としてインターポールから 国際指名手配されていて、子供達の居るアメリカに帰ることが出来ないで居る。
妻、マルも、同じ仕事をしていたが、仕事のストレスによって、夢の世界と現実の世界の境界がわからなくなって 自ら命を絶ってしまっていた。子供達は コブの 大学教授をしている父親と母親が 世話をしていてくれている。自分がこのような仕事をしているために 自殺してしまった妻に対しても また会えなくなった子供達にも コブは深い罪悪感を持っている。
ビジネスマン サイトウから仕事の依頼があった。成功したらアメリカに帰国して子供達に会えるように手配してくれるという。それは サイトウのライバル会社の社長ロバートの潜在意識の中に入りこみ、情報を盗みだすのではなく、自分で自分の会社を潰すという考えを植え込む「インセプション」という仕事だった。それは夢の中からアイデアを盗むよりも はるかに難しい仕事だった。
コブは 仕事を請け負うに当たって、心理学者の父親の助言を得てアリアドネ(エレン ペイジ)という女子学生を 仲間として協力を得ることにする。彼女は夢をデザインすることができる。また「泥棒」という名の情報をスリとって それをコピーすることができる男や、「薬屋」という夢に導入するための薬を調合できる男をチームのメンバーに入れる。
世界のオイルを一手に収める大富豪の息子ロバートが 死の床にある父親に会いに行く為に 乗っている飛行機の搭乗時間は10時間。その間にロバートを眠らせて チーム全員が同じ機械に取り付けて 眠ったロバートをチームのデザインした夢の中におびき寄せる。そこまでは 守備よく成功する。
しかし予想外に、ロバートは自分の潜在意識の世界を守る訓練を受けていた。彼の夢のなかには それを読み取ろうとするものを攻撃する敵や戦士達が沢山居る。ロバートの無意識の意識を守ろうとする無数の敵と、コブたちチームは激しい戦闘をしなければならなかった。運の悪いことに、サイトウが銃で撃たれて大怪我をする。強い催眠薬で 夢に導入された場合 夢に中で殺されると無意識の虚無に陥り 廃人になってしまう。一時もはやく、チームは仕事を済ませなければならなくなった。
コブは現実世界と夢の世界の境界がわからなくならないように ポケットにコマを入れてる。コマを回して 永遠に回り続ける世界は夢の世界で コマが止まるのが現実世界だ。
夢の世界では重力も距離も時間もない。数秒の眠りの中で人は何十年も年をとる。眠りのなかで死ぬと目が覚める。催眠薬を使って夢に導入されて 夢に中で殺されると潜在意識の無に陥り現実世界で廃人になってしまうので、そうならないように、チームの仲間は、睡眠中の仲間に水をかけて強制的に起こさなければならない。
チームは 激しい戦闘の末、ロバートの心の奥底に仕舞われていた金庫を開ける。ロバートは大富豪で偉大な事業家の父親に育てられて 父に「期待はずれだった」と言われたことで、深く傷ついている。父の期待に答えて 仕事を継ぐことだけを念じて生きてきた。しかし、こじ開けられた夢に中で再会した死の床にある父は、「おまえが自分の生きたいように生きなかったことが期待はずれだった。」という意味だったのだということがわかる。そして、父に愛された子供の時の写真とともに、父が作って 彼が大事にしていたカザグルマが 父の金庫に しまわれていた。ロバートを苛んでいた長年の心の傷が癒された。父との心からの和解。
こうして しっかりロバートはチームの思惑通りに 無意識の中で自分に会社を潰す考えを植え付けられていたのだった。
夢の中で銃撃を受けたサイトウを 救うことができるだろうか。彼は戦闘の途中で死んでしまう。
また、コブの夢の中には、死んだ妻マルが いつも出てきてコブの仕事の邪魔をする。コブはマルから開放されることが できるのだろうか。
以前、コブとマルは二人で共通の夢を共有していた。二人でデザインした夢の世界を作って 50年先まで二人が仲良く暮らせる世界を作っていた。そこでは コマはいつまでも回り続け、二人の子供達はいつも背を向けている。マルが心変わりしないように、、実はコブは二人の夢をデザインするだけでなく、モルに「インセプション」を実験したのだった。そのために、マルは現実の世界と夢の世界の境界線がわからなくなって、自殺してしまった。その罪が余りに深いゆえに、コブが仕事で 無意識の世界に入るたびに マルが必ず出てきて邪魔をする。
チームの面々は 航空機の中だ。
10時間の長い眠りから一人一人と、目を覚ます。着いたところはアメリカ。荷物受け取りのところで それぞれは自分の荷物を受け取り 笑顔で別れ別れになっていく。
コブが出口を出ると 父親が迎えに来てくれている。そして、父親と共に着いた家に足を踏み入れると 二人の子供達が待ち構えていた。飛びついてくる子供達。しっかり子供達を抱きしめて 喜びにふるえるコブ。幸せすぎて コブは思わずコマを回してみる。しかし、それは いつまでもいつまでも回り続ける止まらないコマではなかったか、、、、。
というストーリー。
画面を見ていて それが現実世界のお話なのか、夢の中かわからない。嘘か真か わからないまま 激しいアクションシーンが続いていく。とてもわかりにくくて、何かだまされたみたい。同じ デカプリオ主演の映画「シャッターアイランド」のほうが分かりやすかった。「シャッター、、」では 精神病患者の頭の中で起こっていることと、現実との2極に別れた世界だった。
今回の無意識の意識、潜在意識の世界は、現実世界に限りなく近いため、どこにいるのかが、とてもわかりにくい。
それだけに それぞれの人の解釈がちがってくるだろう。難しい映画というのは 自己流の解釈ができて、それが他の人と全然ちがう おもしろさがある。私の書いた解釈を これは違う!と言う人も多いだろう。これは私の解釈したストーリーであって、他に人と違って それで良い。
ハッピーエンドだった と思っている人も多い。
コブの心の傷が余りに大きくて 子供たちにも会えない姿が可哀想で可哀想で 何とか子供達に会わせてあげたい、、映画の観客の無意識の願望が 最後をハッピーエンドにするのだろう。ここで すでに観ている人は「インセプト」されているのだ。