「虚実入り乱れた夢の世界にどっぷり浸かる」インセプション マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
虚実入り乱れた夢の世界にどっぷり浸かる
まず夢を操って何ができるのか、その道のエキスパートに、新参のメンバーを絡めたセッティングで、話の展開を追っているうちにテクニックの手の内が見えてくる。しかも視覚的に訴える映像がよくできている上に、時間もたっぷりとって、観客が後半の大胆な夢の構築に取り残されることがないよう配慮されている。長めの上映時間2時間28分は、前振りと伏線に時間をかけた結果と言えよう。
だが、夢を操るという発想だけでは、面白い映画にはならなかったはずだ。
メンバーたちが新たに挑んだでっかいヤマは、同時進行する数層の夢のなかで繰り広げられる。この層は、互いにリンクし合い、しかも時間の進行がそれぞれ大きく異なる。この設定が、スリリングな世界を生み出した。
この歪んだ時間軸に現れるコブの妻モル(マリオン・コティヤール)、ふたりの間にいったい何があったのか、サブ・ストーリーの謎も深まるばかりだ。虚実入り乱れた夢の世界にどっぷり浸かってしまう。
「(500)日のサマー」のジョゼフ・ゴードン=レヴィットが、コブの頼れる相棒をクールに好演。渡辺謙も怪しげでいい。
ハンス・ジマーの音楽が効果的。音響も低音たっぷりながら、静と動をよく表現している。
夢から覚醒させるための誘導に使われるエディット・ピアフの「水に流して」。エディット・ピアフといえばコティヤールが演じた「エディット・ピアフ ~愛の賛歌~」。映画もひとつの夢の世界。複数の作品が交錯して、時間感覚が歪んだ虚構の空間に迷い込んだ心地になる。
今年はSFの当たり年だ。
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