「圧巻!」インセプション DSWさんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻!
これは映像的に圧巻と言える作品だと思う。
1999年「マトリックス」を劇場で見て覚えた興奮に近いものがあった。
「マトリックス」と似て、重力を無視するアクションシーンや、いろんな次元を越える(この場合、第1段階の夢からその深く第2段階の夢へなど)舞台変化、キャラクター個人に超人的な能力はないにしても、こういうSFファンタジー的な要素がありながらもリアルさにこだわったノーラン監督はいい選択をしたと思う。
CGを使うシーンを極力絞って、できるだけ本物を撮る演出。やっぱり「ダークナイト」でハリウッドで不動の巨匠の位置を得た監督ならできる業だ。
夢の中ならではの想像力を有したデザイン(アーキテクトの仕事)は面白く、いつの間にか夢の中に!っていう驚きも多々あった。
予告編を見るからに全体的に複雑な内容だと思っていたけど、意外と解りやすかったと思う。確かに第1部(主人公・コブ(レオナルド・ディカプリオ)が一大ミッションに取りかかるまでの序章辺り)はこのインセプションと言われる作業についての説明が多く、付いて行くのが精一杯で大変だった。けど、やっと彼の仕事を理解し始めた時に、ミッションが始まる。ここ10年近くの映画の中でこの作品の後半のアクションシーンは一番難しいものとなったはず。一歩間違えれば観客は今どの夢の層のどの部分にいるのか解らなくなるかも。
でも、ノーラン監督は複雑思えるシークエンスを簡易にうまく演出するのに長けているから、見ていて置いて行かれる気はしなかった。
ただ一度の鑑賞ではまだ完璧に理解できていないから、もう一度か二度は見たいと思った。
個人的に、渡辺謙が非常に良かったと思う。脇役かと思ったら、ほとんど準主役的な位置にいる。映画の冒頭から最後まで出ているし、ノーラン監督は非常にいい使い方(失礼だが)をしたと思う。渡辺謙という存在が強く出ていた気がする。
それに、この映画の一番好きな所は、黒幕と言える敵が居ないこと。
敵が居るとすれば、コブの妻だろう。でも、彼女の存在はあくまでコブの投影、本人ではない。だから、相手は妻であっても、コブの心の弱い部分と言えよう。だから、最後見終わった時に、キャラクター全員がハッピーエンドで終われるのだ。
サイトー(渡辺謙)はコブに託したミッションで自分の会社を守ろうとするけど、そのターゲットになったロバート(キリアン・マーフィー)も最後は(嘘であっても)父親との和解があるし、とにかく主要メンバー達の葛藤は晴れるわけで、ネガティブな結果を得る人がいないということだ。
この展開は最近の映画では珍しいと思った。
そういう意味でも新鮮な試みがされていてよかったと思う。
それにここまでアクションアドベンチャー的な要素が多い作品で、最後に泣かされたのには驚いた。「ダークナイト」の時もそうだったけど、またノーラン監督にやられてしまった。。。w
また見に行こう!