「空気欲。」空気人形 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
空気欲。
ラブドールの恋話といえば「ラースと、その彼女」が浮かぶ。
あの人形は動かなかったが、周りの人間達の心を動かした。
今回は人形に心が宿って、歩いて動き回り、恋も経験する。
似て非なる話にはなるが…何かの代用品として購入されて、
やがていつか捨てられる(忘れ去られる)存在に変わりはない。
現代人の空虚で孤独な世界を垣間見せ、それでも何処かに
拠り所を求めずにはいられない「欲」の世界を巧く描いている。
ぺ・ドゥナはいきなりの全裸からして^^;よく頑張ったと思う。
あまりこういうシリアスな雰囲気を感じていなかったのだが、
彼女の素っ頓狂な表情がかえって新鮮で可笑しさを醸し出し、
愛らしい人形に仕上がっている。誰かの心を埋めるための
代用品である自分が、誰かを愛し傷つき、同じ思いを味わう。
心を持ったことが幸か不幸か、自分のアイデンティティーを
探りながら(ここも面白い)どんな最期を迎えるのか、早々に
予感させてしまう演出が怖い。が同時に幸福でもあるという、
本当に難しい演技解釈がよくできたなぁと感心した。
感情を持つ人間同士が付き合うのには確かに骨が折れる。
人形の持ち主である板尾創路(なぜ彼?^^;)が恋人と別れて
以降、人形としか愛を交わさないという生活をしているのも
「面倒くさいからイヤだ」という定義付けをしている。
なんでも言うことを聞いてくれて、逆らわず、自分の欲だけを
満たしてくれる存在があったら、疲れた人間はそこへ流れる。
ただでさえやってられない毎日なのに、これで口答えされちゃ
堪ったもんじゃないということね^^;どこの家庭でもありそうだ…
後半で「ビックリ」する展開が待ち受けているが。。
直前の場面でオダジョーが言った台詞の意味が活きてくる。
彼女にしてみれば愛ある行為。であるがゆえ、さらに切ない…
もともと心がなければ、誰も傷つかないし傷つけもしない。
そうやって生きている人間こそ空気人形なのかもしれない。
(私は食べ物を入れないとダメです。料理で満たしてください♪)