「子ども達が活き活きして素晴らしい!こんな学校見てみたい!」パリ20区、僕たちのクラス Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
子ども達が活き活きして素晴らしい!こんな学校見てみたい!
フランスの教育事情には全く知識が無い私であるが、そう言う事を抜きにしてこの映画は色々考える事が一杯の映画で、とっても楽しかった。
国語の担任教師とそのクラスの生徒との学校生活の描写がとても、ナチュラルだったのだ。
24人の生徒全員が、子役俳優では無かったと言うけれど、全く信じられない!!!
フランスの学校へTVクルーを派遣して撮影した様な感覚で、ドキュメンタリーでも観ている気に錯覚してしまう程に、生徒の一人一人が活き活きとリアルに描かれていた。
日本のTVでも学校ものは、多数有るし、「ごくせん」「金ハ先生」いえいえ、映画なら、山田洋次監督の「学校」と言う名作もあるし、もっと古くは「24の瞳」もある。
どれも、生徒と先生の関係性の中から、様々な家庭での生徒のドラマ事情を描いて、教育の意義や、生きる事の意味、仕事に対する意味など、様々な問題を提起してくるのが、この学園ものだ。
しかし、日本の場合は、様々な家庭事情を描いていると言っても、その殆んどは、日本人と言う単一民族の事で、人種や、民族の違い、そこから来る言語や、文化背景の違い迄を含めた、本当に日本の学園もののドラマでは絶対描く事が出来ない問題まで、深く切り込んでいるのだ!本当に奥が深い!
例えば、日本人は一般的には、他国の人々に比べ、語学習得が不得手だと良く言われ、特に話すのが苦手だと言われているが、この映画を観ると、やはりヨーロッパなどの様に、大陸続きで国が有ると異民族や、異国の人が交流出来易い環境にあると、そこから発生する、文化習慣の違いを克服し、理解し合う為には自然と話をすると言う行為が、日常生活の中で育まれ、訓練されていくし、人間としてもより幅の有る見識豊かな、人間形成が成されていく様に思われた。
ローラン・カンテ監督の作品を観るのは本作が初めてである。彼は社会派の映画監督との事であるらしいのだが、私は残念であるが、この監督の映画である「ヒューマンリソース」1999年及び「タイムアウト」2001年の両作品共に未だ観ていないのだ。
その為に、彼の他の作品と比較して、本作の出来について感想を言う事が出来ないのだが、こう言う傾向の社会派作品は個人的にはとても大好きな映画の部類に属するため、文句無く高得点を入れたくなるし、一人でも多くの人に観て欲しい作品として推薦したい言う思いに駆られたのだった。
映画の効用の1つには、異文化を映画から理解すると言う要素も大きいと思うのだが、この作品はそう言う意味でもとても有効な作品だ。
この映画は、単なる熱血教師と、問題生徒との学園生活を描いているだけでは無く、教育をしっかり受けられない子供達の問題や、移民が強制送還になってしまう問題や、フランス国内の教育の問題点も付き付ける。思春期の子供たちは、色々な問題に悩み、自己の確立と、自己の将来への展望に悩み苦しむ多感で不安定な年頃である。そこへ更に教育制度の問題点を描き出しているのに、これ程自然にそして観る者に異和感を感じさせずに、フランスの学校の日常を描き出したこのローラン・カンテ監督の手腕には脱帽する!
監督と共に脚本も書いたと言う原作者であり、教師役で出演もしたと言うフランソワ・ベゴドーと言う才能豊かな作家の存在抜きにしては、この素晴らしい作品の成立は無かった事だろう!2人の才能豊かな作家たちと、何よりも、この24の活き活きとした生徒達を演じた若者たちにエールを送りたい!