戦場でワルツをのレビュー・感想・評価
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失われた戦場の記憶
本作を鑑賞前に、ラストが衝撃的などと聞いていたためか少々先入観を持っての鑑賞となってしまった。
主人公が従軍した頃の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていて、その失われた記憶をたどる物語。
途中、カメラを通して戦場をリアルに感じられなかったカメラマンがカメラを失い、現実を直視してショックを受けたという話が伏線として挟まれており、てっきり主人公が虐殺に直接関わっていたというオチだと想像してしまった。
自身が犯した虐殺行為を直視できずに自己防衛からその記憶を心の奥底へと沈めてしまったのかと。
実際は知らずに虐殺に関わった部分があったのは事実だが、誰も彼を責められるようなものではないだろう。
ラストはアニメーションから実写に切り替わり、惨たらしい虐殺の事実をまざまざと見せつけられる。これはこれで確かに衝撃的だ。しかし、変な先入観を持ったがために本来本作の持つ作品としての価値を読み取れずじまいだった。
アニメーションは作家性が強いセンスの良いものだった。この監督の別の作品も観てみたい。
よかった
イスラエル兵のトラウマをめぐるミステリー的な構成だった。どんな衝撃的な事実が明らかになるのかと思ってハラハラしていたら、結局、虐殺にあまり関わっておらずもっと悲惨な現実を直視した人たちはどうなるんだと思った。遠くから眺めているだけで、それはそれできつかったのだろうけど、あまり腑に落ちなかった。それより、戦友たちのエピソードの方がよっぽどドラマチックで悲惨で危険だった。
アニメは美しかった。最後の実写が恐ろしかった。
アニメだからこその衝撃
人間の深層心理や戦争の実態をあぶりだすドキュメンタリーと、創造力あふれるアニメーションの融合…映像は確かに面白いけど、これってアニメである必要ある?と思いながら見てた。もちろん実写でもいけただろうけど、それだとここまでの衝撃はなかったはず。
あのラスト…あれのためにアニメである必要があるのかなとすら思った。
アニメで伝えたいこととは。
名画座にて。
あの「おくりびと」と競い合った?作品。ということで
観られるのをとても楽しみにしていたが…。
完成度の高さ、ではこちらになるんだろうか。
しかし分かりやすさ、ではやはりおくりびとなんだろう。
こういう作品を作った志の高さには敬服するが、万人が
諸手を挙げて大絶賛する作品ではないなと感じた。
私たち日本人にイスラエル・パレスチナ問題を語れ、と
言われても分からない人には到底分からない部分が
あるため、“サブラ・シャティーラの大虐殺”と聞いて
すぐにそれが分かる人も多くはないと思う。(私も)
逆に日本人がヒロシマの悲劇を他国人に語ったときに
それをよく「知らない」といわれても仕方ないのと同じだ。
じゃあ語らなくていいのか?といわれるとそうじゃない。
こういう悲劇は、それを知らない人間にまで深く語り
継がれていかなければ。二度と繰り返さないためにも。
ドキュメンタリー・アニメの手法と音楽の組み合わせ、
冒頭からすごい作品になりそうだな、と惹きこまれたが
そのテンポが長く続くことはなく、主人公が記憶をとり
戻すまでの妄想や悪夢の繰り返し、友人へのインタビュー
の繰り返し、という淡々としたペースへと変わっていく。
レバノンでの記憶が欠落したということは、よほどの
辛い経験をしたに他ならず、それを無理に思い出す必要が
あるのかと友人達は繰り返すが、主人公は聞こうとしない。
そのトラウマを何とかしなければ、悪夢から逃れられない。
蓋を開ければ…(ラストで明かされる)という事実だったが、
いきなり挿入される実写の凄惨な光景には胸が詰まる。
うーん…なんといえばいいのか。
甦る記憶をアニメで表現することを逃げという人もいれば
記憶の修正と捉える人もいるんだろうな。
凄惨さを感じさせない瞑想的な描き方は、目を背けたくは
ならないが、胸に迫りくるものもない。
云わんとしていることは伝わってくるが、その捉え方は
人それぞれということになる作品。
タイトルの「ワルツ」のシーンも、私にはその感覚だった。
(大虐殺と弔い、テーマも相反する作品同士だったのね)
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