「本作、京アニ事件、ジョーカーこれらは深い暗黒の中で通底していたのだ」キング・オブ・コメディ(1983) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本作、京アニ事件、ジョーカーこれらは深い暗黒の中で通底していたのだ
希有な傑作
いくら激賞しても足りない
成功するには下積みから長い長い階段を苦労して一段づつ登っていく
そんなこと分かってるさ
でもそれじゃ凄い時間がかかる
それでもコツコツ真面目にやっていたらお客さんが評価してくれるはず
本当か?
そうは言ってもその最初の階段の一段目すら登れないんだ
いつまでも若いわけじゃない
コメデイアンだけの話?
学問の世界だって同じ
商売だって同じ
だから誰だって近道したい
誰かに自分の才能を認めてもらって引き上げてもらうんだ
業界の大物が、マスコミが突然自分の存在に気がつく、いきなりスポットライトが当たり自分はすぐさま業界のスターだ
こんなことを考えるのは誰にだってあることだろう
だからパンプキンは私達だ
浅ましい売り込みのシーンに冷や汗がでる人もいるのではないか?
マーシャだって片思いがこじれ切ってストーカーになってしまう事例は現代では女も男も珍しくない
どちらも映画だからエキセントリックな所までいってしまう
ラストシーン
パンプキンは出所して一躍スター?
ハッピーエンド?
そんなわけ在るはずも無い
いくら司会が盛り上げようと声を張り上げて彼を紹介しても観客は冷めきっている
歓声と拍手はサクラだけだ
アウェイの空気は彼を押しつぶそうとしている
それを跳ね返す芸の力が自分には無いことをパンプキンは自覚している
目が泳いでいるではないか
100日で死ぬ○○
突然これを思い出した
21世紀のいまはYouTuberが掃いて捨てるほどいる
ブログでもSNSでもいくらでも個人が発表できる
インスタやワードがバズれば一夜にしてスターになることは珍しくもない
パンプキンの時代からすれば夢のようだ
しかし、もう才能があるのに認めて貰える機会がないなんて甘えたことはもう言えないのだ
そう、なにかもっと追い詰められたようには感じないだろうか?
才能が実は本当に無い
努力する根気がそもそも無い、続かない
強運なんかあるわけもない
だけど成功したい
そんなチンケな私達普通の人間には世の中の生き辛さが一層ハッキリしてしまう
それが21世紀なのかも知れない
バズった所で、所詮本当の実力が無ければあっという間に消え去ってしまう
それどころか反感すら買ってしまうのだ
100日で死ぬ○○のように
パンプキンと同じように
ならどうすればよいのだ
才能のない奴はどう足掻いても駄目なのか
もしそれを認められないような人間がいたなら
その孤独、絶望はパンプキンの時代より何倍もより深く暗いのではないのか?
京都アニメーションの放火殺人事件はそれでは無かったのか?
映画ジョーカーは本作のオマージュではない
本当はリメイクだ
パンプキンは21世紀にはジョーカーとなって社会を扇動する時代になったのだ
京アニの事件は2019年7月18日
映画ジョーカーは同年10月4日
本作、京アニ事件、ジョーカー
これらは深い暗黒の中で通底していたのだ
あと1ヵ月で京都アニ事件の三回忌
改めてご冥福をお祈りしたい