「表向きはシンプル。でも裏テーマは深い・・・?」エスター 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
表向きはシンプル。でも裏テーマは深い・・・?
ホラーとて侮るなかれ。
いやあ~面白い!!!!!!!
面白いの一言。パッケージの知名度が高いだけはある一級品のAAA作品でした。
本作は至ってシンプルで『エスター』なる少女(33のおばさん)が養父にアタックするまでの道中を描いたもの。
それは最終盤にて明かされる衝撃の事実で、実は彼女は大人だったという種明かしにも繋がっていきます。
そもそも、エスターがケイトら家族を攻撃していたのは何故なのか?薄暗い過去の真実とは?
単にヤバいガキでした~という真実ならパッケージを見ただけでも予想が付きます。本作はそんなんじゃないんです・・・・。
それらは全て、”発育不全”というエスターにとっても不本意な『病気』が引き起こした悲劇だったんですね。
要するに、全ては積もりに積もった性欲発散の為だったわけなのです(笑)。
本作、妙に序盤からエロ本だの無駄に濃いラブシーンだのが盛り込まれているんですが、それらが伏線だったとは。
(因みにケイト役の女優さんがメチャエロい)
他にも、ケイトらの性行為を目撃してそれを良く思ってなさそうだったシーンや、さらっと流された歯医者に行かない件も、全部伏線でビックリあっぱれです。
しかし、本作の裏側は全然シンプルじゃないのかもしれません。エスターにラブシーンを目撃された場面を観て、鑑賞している私たちはどう思ったでしょうか?
非常に気不味い気分になると同時に、エスターにどこか申し訳ないような気持ちになったことでしょう。
つまり、子供として見ていた序盤のエスターに対しては、ケイトらのいい加減な側面の方が目立ったと思うのです。
養子として心機一転頑張っているのに、その子が目撃するかもしれない事にも気を使えずに”Fbom”を始める二人。エスターにとって、ケイトを見限ったのはこの辺りではないでしょうか。
これは他の子供達についても同様です。マックスはまだ小さくてオマケに耳が悪いので自己主張が弱く、結果的にエスターの手下にされています。
一方のダニエルはもう少し年上で健常なので、キッパリと「妹なんて要らない!」と主張出来ています。
つまり、子供達にとってエスターは不必要な存在なのです。エスターを必要としていたのはケイトらだけなのです。
そもそもの話、エスターを引き取る時点で子供達に相談しているような様子すらもありませんでした。
三人目を流産した記憶からの開放という、所詮は親達の身勝手な行動により、エスターという災厄を呼び寄せているのです。
そして、真っ先にエスターの餌食になるのはマックスとダニエルでした。これは偶然でしょうか?
いいえ、子ども達の気持ちにまで気を使えずに勝手にエスターを呼び込んだケイトらに対する因果応報でしょう。
本作は冒頭から刺激的な流産シーンが盛り込まれていますが、あれはまさにケイトが”子ども達に向き合えていない”というメタファーだったのでしょう。
エスターにしても、彼女とケイトとの間にはどこか齟齬が有って終始気の合う感じではありませんでした(それはエスターの真意もありますが笑)。
一方でジョンとは良好な関係を築いていましたが、それはエスターの真意は勿論の事、ジョンがエスターにちゃんと向き合っていた部分も有ると思います。
表向きにはエスターおばさんの恐るべき計画。
そして裏テーマとしては、親失格の夫婦に降り掛かった災厄。
独身で観るのと親になってから観るのとでは感想が変わりそうな映画で、非常に秀逸な脚本です。もちろん映像もピカイチ。
こういうのを邦画も作れたなら~。行間の情報量が半端じゃない。