「素晴らしい家族映画」サマーウォーズ 金木研さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい家族映画
まず感想の前に、本作のレビューを見ていると「設定」と「ご都合主義」の違いを理解していない人が大勢いることがわかる。たしかにご都合主義的展開も多々あり、決してそこに目を瞑れとは要求できまい。ただ、あの一家はあの人数で一人一人の個性を発揮してこその映画であるため、主人公を引き立てるために出てきたご都合キャラでは決してない。
アニメーションはあくまでフィクションであり、ノンフィクションなど描けるはずがないのだ。そこにご都合主義と設定を勘違いした指摘をされてもどうすることもできない。あの家族が現実にいるとはとても思えない。しかしだからこそこのアニメーション作品を引き立てるスパイスの一つの要素となり、あの家族がなくては成り立たない。これを理解した上で改めて鑑賞していただきたい。
この映画は仮想現実という近未来と家族愛を存分に堪能できる極上映画だ。いつ現実世界で起こってもおかしくないような設定に嘘のような大家族、そこに紛れ込んだ現代っ子の象徴ともいえる共働き世帯の一人息子が繰り広げる血を超えた絆の話。全てが細田守監督の計算通りに配置され、笑いあり涙ありのストーリーとともに美しい音楽を提供。もうこれ以上何を望むべきかなど思いつくはずもない。
今の家族というのは、SNSのようなツールによって疎遠になっている。しかしこの映画は逆で、むしろSNSのようなツールがあることでさらに強い家族の絆が生まれ、それ以上に赤の他人とも深く親密になれるまさに我々の思い描ける理想を体現している。それを2時間でまとめ上げ、一人一人のドラマを魅せながら本筋のストーリーでも泣くこと間違いなしの究極のストーリーを作り上げた。
10/10