「逃げ場はねぇ。自分が強くなるしかねぇんだょ。」南極料理人 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)
逃げ場はねぇ。自分が強くなるしかねぇんだょ。
内容は、南極大陸の中央に位置する極寒の基地で共同生活をする8人の群像劇。調理担当の西村を中心とする視点で描きながらも其々の人間関係や内面と厳しい自然条件下で生活する事の協調性や嫌悪感を笑い沢山で描きながら各人の幸せのあり方を模索する物語。印象に残った言葉は、『胃にもたれる(泣)』で主人公の西本が日本の家族に言った言葉を思い出して大号泣しながら唐揚げを食べる時には目頭熱くなりました。印象に残った場面は、最後の場面で食べるタレで汚れてしまったテリヤキバーガーを食べた時に、自分が南極大陸に居たことを思い出し胃にもたれる様な食べ物を幸せと感じ自分の幸せのあり方に思い馳せる場面。南極に行き胃が鍛えられ美味しく食べれる様になった所が上手いなぁと感じました。日常生活に流されて身近過ぎて愛情の無い様な振る舞いをみせる家族関係の中が、実は深い愛情で繋がってる様子は、大好きだから言わないし表現しない日本人的価値観を絶妙に表現した様に感じます。何でもない様な事が幸せであるとの意味合いの伝え方や群像劇で其々の思惑のすれ違いや共同生活の擦り合わせに笑う要素が多すぎて観ていて気持ちの落ち着く所がありませんでした。群像劇を描くのが上手い監督だなぁと感心しました。それでいてそれぞれの心の機微の間の表現や観ていて胸の詰まるシーンと笑いのリズムが非常に心地良かった様に思います。閉鎖空間での笑いや怒り軋轢や齟齬や希望と絶望など巧みに折り合わさり見応えありました。個人的には漫画のろくでなしブルースやゴリラーマンがあったのが自分もよく読んだので1997年の親近感がもてました。
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