「盛大なロケで作ったちっぽけなホームドラマ」南極料理人 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
盛大なロケで作ったちっぽけなホームドラマ
男性宇宙飛行士と不倫していた米国の女性飛行士が、相手が別の恋人をつくったのを怒って、宇宙から地上に舞い戻り、遠路はるばるその女性を襲いに行くという事件があった。
米国メディアは「なんと狭い宇宙なんだw」と書き立てたが…この映画には何だかそんな雰囲気がある。
凄い寒冷地まで、恐らくはかなりの資材とスタッフで出かけ、長期間ロケを敢行して、多額の製作費をかけて作ったのは、壮大な南極物語…ではなく、ちっぽけなホームドラマなのであるw
観測隊のメンバーは隊長を父、料理人を母、雪氷学者や医師を兄弟とする疑似家族だ。
寡黙ながら明るい隊長、全員の食事に気を遣う料理人、気の強い雪氷学者、飄々とした医師、サボってばかりのずぼらな車両係等々が美味い料理に舌鼓をうったり、凍り付いた雪原にジュースでダイヤモンドを描いて野球したり、でかい肉塊を松明のようにして焼いたりする。
どれもちっぽけなお話しであり、どこにでもいそうな隊員たち…彼らが
喜び合ったり、喧嘩したり、酒を酌み交わしたりする映画。まさにホームドラマだ。
もちろん極地ゆえのこまごまとした楽しい仕掛けも出てくる。でも、中身は隊員たちの日常生活の情景(とくに食事)と個々の人柄を楽しむ映画なのである。
洒落た企画の意外性が楽しいし、食事がどれも美味そうで見惚れる。俺はステーキを焼くシーンと中華を作るシーンが好きだな。あと、伊勢海老のエビフライには笑った。
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