劇場公開日 2009年10月24日

「巨大スケールときめ細やかさが同居する、熱い映画」沈まぬ太陽 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0巨大スケールときめ細やかさが同居する、熱い映画

2009年11月7日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

山崎豊子原作の作品って実はひとつも観た事無い……。
だから他の山崎豊子作品との比較はできないが、この映画の見応えは保証できる。

御巣鷹山の再現や外地ロケ、『カムイ外伝』の10倍は精緻なCG等を駆使した画作りは気合十分で、かなりのスケール感だ。
だが大味な印象はない。やや緩慢ながら奇をてらわない演出で、大スケールの部分と、家族の絆や遺族感情を描く細やかな部分とをうまく同居させている。

己の保身と私益を貪る事しか興味の無い輩ばかりが権力を握る世の中だが、それでも諦めるな。
人に尽くし、命を尊ぶ、人間らしい道を見失うな。
映画からそんな力強いメッセージを感じ、胸が熱くなった。

残念なのは主人公・恩地が帰国してから航空機事故が起こるまでの「恐ろしくて残酷で気の休まる暇がない」期間を描かなかった点。
闘志を失い掛けた男の再生を描くなら、そこは描いて然るべきでは無いのか。
また、大量のエキストラの捌き方も不満。特に航空機事故の遺族らの演技はかなり酷い。実力派の俳優とエキストラとの間に温度差がありすぎて興醒めだ。

また愚痴っぽくなっちゃったが、本作は骨太で見応えもあり、何より熱い映画だ。熱い映画は、嫌いになれない。

浮遊きびなご