「さすがにマーベル作品だけに、ヒーローものとして楽しめます。ガンアクションが痛快そのもの。」パニッシャー ウォー・ゾーン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
さすがにマーベル作品だけに、ヒーローものとして楽しめます。ガンアクションが痛快そのもの。
同じガン・アクションものでも、今週見た『マックス・ペイン』と比べて、ストーリーがシンプルで、理屈抜きに楽しめるところが良かったです。さすがにマーベル・スタジオ製作作品だけに、ハードボイルド臭くせずヒーローものとしてエンターテイメントに徹しています。
旧作とは設定を元特殊部隊の指導教官に変えているだけに、処刑方法は豪快そのもの。マシンガンから、特殊な毒矢、そして必要なら小型爆弾で部屋ごとぶっ飛ばすことも。全身を防弾着に包み込んで、圧倒的な数の敵に単身で向かっていくラストのシーンは、痛快でした。
やはり特殊部隊出身だけに、その動きにも説得力があります。これを見てしまうと『マックス・ペイン』でのマックスの不死身さが嘘っぽく見えましたね。
ところで、パニッシャーことキャッスルは、マフィアたちを正義の名の下に処刑することにおいて、『ダークナイト』のバットマンのように全く躊躇しません。刑事が目の前にいて逮捕しようとしても、こいつは悪だとキャッスルが判断したら、即刻処刑してしまうのです。
けれども超人的なヒーローでも激しい戦闘のなかではミスもするもの。誤ってFBI囮捜査官を殺してしまったとき、パニッシャーを引退することまで決意してしまうほど憔悴する姿が意外でした。
その時フラッシュバックするキャッスルの家族が殺されたシーン。やはり彼にとって、かけがえのない家族の命を自らの手で奪ってしまったことが余程答えたのでしょう。
残された妻子に謝罪に行ったとき、未亡人なったそのアンジェラからは簡単に許しはもらえませんでした。けれども父親を失った娘と、娘を殺されたキャッスルの間で、お互いの孤独な気持ちが繋がるところはジンときましたね。それと、いろいろなプロセスを経て、この奥さんが最後に、パニッシャーは正義だったと認めるところも思わず感動しました。
実はキャッスル神学校で学んでいたこともあって、意外と信心深いのです。その信仰心が、目には目をと強烈な正義感の源泉になっているようでした。
あと笑えるところは、地元の警察が、パニッシャーの殺人行為を黙認しているところです。潜入捜査官の同僚を殺されたFBIのホールは、パニッシャー逮捕に奔走します。しかし地元警察の刑事や『パニッシャー対策室』の担当官が、すっかりパニッシャーと連んでいることを知って唖然となるところが可笑しかったです。
そんなポールが徐々にパニッシャーに対して、見方を変えていくところも見所です。
そしてラスト。何度も捕まっては、法取引で保釈されてしまうジグソウとパニッシャーの最終対決が待ち受けます。
人質になったパニッシャーの友人で、武器供給の支援をしているマイクロか、彼を父親のように慕うアンジェラの娘か。ジグソウとパニッシャーにどちらの命を救いたいか、究極の選択を迫ります。
さて、パニッシャーは選んだのは・・・。
ところで、生身の人間の肉をかじるジグソウの弟とパニッシャーの対決では、パニッシャーが急所を蹴られても平然としています。女性監督だけに、痛みがよく分からなかったのでしょうか。
●旧作について
旧作の『パニッシャー(2004)』では、裏社会を支配する資産家の溺愛する息子がFBIによって殺されたことにより、その復讐としてFBI潜入捜査官フランク・キャッスルの一家を虐殺したことになっています。
家族を失ったキャッスルは、闇の資産家が法律では十分に罰しきれないことを知り、闇の私刑執行人パニッシャーへと生まれ変わるということで、本作と同じ流れとなるわけです。
もともとコミックではなんと『スパイダーマン』の脇役だったようです。スパイダーマンを犯罪者と思い込んで彼の命を付け狙うという設定です。
悪人とはいえ罪状にかかわらず私刑に処してしまうパニッシャーは、見方を変えれば殺人鬼とも言えるダーティなヒーローです。そんなパニッシャーがマーベル・コミュクで主役の座を掴んだのも、アメリカの犯罪が凶悪化していった世相と連動しているようです。