劇場公開日 2010年8月7日

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「紙ヒコーキとスタッフの試行錯誤が結実した傑作」ヒックとドラゴン もぐもぐ7572さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0紙ヒコーキとスタッフの試行錯誤が結実した傑作

2010年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、DVD/BD

泣ける

楽しい

興奮

<12月16日更新・DVD鑑賞・音声解説によせて>
ツタヤで早速レンタルして今日16日に観賞。(アマゾンで注文したものの届くのは早くて18日と思い、待ち切れずフライングです)上映終了からのこの2ヶ月、あぁ本当に長かった!
まずは感想、2D自宅テレビでも奥行き感・飛翔感は存分に味わえました。劇場字幕鑑賞で確認済みだったのですが、ほっとしました♪
心落ち着けて観てみて思うのは、この作品の映像のすごさは3Dの技術そのものじゃない。遠近での色遣いの使い分け、そして抜群のカメラワーク(アニメだから実は違うけど、ここではそう呼ばせてください)にある。
実は2Dの段階で十分に奥行きや飛び出し感を出せているのです。それに3Dを組み込んだのだからそりゃ飛んだり落ちたりがすごいに決まってる。大勢のスタッフに心からの拍手を送りたいです。
そして忘れもしない心揺さぶられるストーリー。何度繰り返して観ようと飽きることのない丁寧なつくりの物語と映像はやはり、語りつくせない。。。

ポスターの見た目やうるさいばかりのCMに臆して(実際私がそうでした)観そこなった方も多いと思います。
DVDが出たこの機会にぜひ一度、鑑賞してみてください。
ひ弱に見えた少年の勇気とその代償を受け止めてください。

(ネタバレありませんが、以下は鑑賞済の方に向けてのDVD感想です♪)

音声解説は、どのポイントでもさもありなん!というコメント。観賞し終わった方はぜひ見てくださいね。
まず注目したのは、多くのシーンで声優担当の役者たちがアドリブを入れていたという事実。(焼き魚を肴にしたゲップの足談義の場面も)少年たちのキャラクターがみな生き生きとしていたのもうなずけます。台詞はキャラクターや世界観をつくる重大な要素、アドリブでもそこを全くはずさずにいたのは役者たちの功績はもちろんですが、 やはり制作側に周到な用意があったからこそでしょう。
そしてこの作品の魅力のひとつである登場人物の演技。 これもアフレコ時の役者たちのしぐさが生きています。(「バイキングを演じた俳優たち」も必見)ヒックを演じたジェイ・バルチェル(しゃべり方が太田光そっくりです^^;)、ちょっぴり卑屈でユーモラスな動きがヒックの愛すべき個性につながっています。
でもそれはヒントに過ぎない、ということも音声解説で確信できます。 役者たちの作りだした個性に、さらに目の動きまで丁寧で魅力的な表情をつけたのは 大勢のスタッフたちの力の結晶だと、解説を聞けば聞くほど納得します。
そして、素晴らしいストーリーテリング。 これは試行錯誤の賜物だったようです。削除シーンはもちろんのこと、今から思えば絶対に必要なシーンの幾つかは綿密な話し合いの上で付け足されているのです。(ヒックが起死回生を思い立つアスティとの場面も後付け!あそこははずせないでしょう)
こういった試行の努力は日本のアニメ界にもぜひ見習っていただきたいところです。 私は日本のアニメも大好きです。 いえ、この作品を観るまでは日本のアニメに傾倒していたといっていい。 でもこの「ヒックとドラゴン」を観て、脚本と演出の緻密さに驚き、いやでもその差を思い知らされたのです。
もちろん監督の熱意で一気に作り上げる作品もいい。でもその力が少しでもゆるんでしまうと、すぐに作品の出来に反映されてしまう。 昨今は特にそれを感じることが多いです。。。
「ヒックとドラゴン」はチーム一丸となって「いかに良質で、楽しい作品を作るか」を上下の隔てなく話し合い尽くしてできた作品。 (その姿勢はドリームワークスやピクサーに共通のものでしょう)主人公ヒックとドラゴンであるトゥースがはじめて心を通わせる、あの有名な似顔絵?シーンだけでも見れば、その演出の隙の無さが感じ取れるはずです。 台詞のないシーン、動作とカメラワークだけで心の動きを表現した力量。 おずおずと互いに歩み寄るその微妙な動きと表情は特筆もの。名演であり名シーンです。
忘れてはならないジョン・パウエルの音楽、素晴らしいです!監督たちも演出上削除が必要なときは断腸の思いだったよう。映画を観てすぐサントラ購入、聴いているだけでシーンの一つ一つが思い浮かびます。
音声解説からはずれますが、吹替もオススメです。変かもしれませんが、私にとってヒックの声はバルチェルではなく田谷隼さんなのです。 口の動きは英語であるはずなのにどの人物ももとから日本語だったようになめらか。日本の声優陣のアフレコが上質であったことが、吹替のみの上映になっても私を劇場へと駆りたてさせた魅力のひとつなのです。 変にタレントさんがあてなくてよかった、と思っているのは私だけではないはず(笑)

こうして振り返ってみると、まず3Dに驚き感動した私ですが、やはりそれは作品の完成度あってこそだと思い至るのです。 2Dだしたいして大きくもないうちのテレビ、 そこでだってヒックやトゥースの生き生きとした表情の魅力、飛翔感の楽しさはちっとも失われていなかった! アスティを伴ったいわゆるロマンティック飛行、上下のわからない浮遊感はちゃんと味わえますよ♪

いつも紙ヒコーキで飛翔の動きを考えたという監督のコメント、優秀なスタッフたちと重ねたたゆまぬ努力が結実したすばらしい作品です。

この作品を創り出してくれたすべての人々にありがとうと言いたい。 感謝しています。この作品と出会い、映画館に通う日々は本当に輝いてました。 毎日いろいろあって疲れたりするけど、こんなに感動できる心が私に残っていたことを思い出させてくれた。
次回作にも期待。でもどんな作品になっても私にとってはこの1作目が一番だろうなぁ…。
かなうものならばこの作品の再上映を、今なお、心から願っています。

<上映終了後記>
3D映像の楽しさを初めて私に教えてくれた作品、もう劇場で観れないことがとても残念です。 ですが何度も観るにつけ、作品としての素晴らしさこそがこの3Dの効果をも高めていたんだと思い至りました。 無意味に飛び出す映像を他の作品で幾度も観ましたが、何の感動も覚えなかった。 バイキングとしては異質であるがゆえのヒックの孤独、それがあったからこそ私はヒックの心の動きや行動ひとつひとつに共感し、同化して、ドラゴンであるトゥースに乗って大空へと飛び立ったその爽快感をヒックとともに味わうことができたのです。
その解き放たれた爽快感に3Dがさらなる臨場感で相乗効果をもたらす、それこそがこの作品で3Dを使う意図だった。
まず「物語」という屋台骨ありきの感動だったのです。 だから2D字幕で観た時にもさほどの遜色を感じなかったのだと。
自宅でのDVD観賞は、確かに劇場で観た時と比べればある程度の迫力は失うでしょう。でもそれを補ってあまりある完成度の高い脚本と演出、映像のきめ細やかさがあると今は確信しています。 ぜひ、ご自宅でDVDで観てください。ヒックと、トゥースととともに空を駆け巡りましょう!<〆> (以下の記事は上映期間中に記したものです)

今まで子どもと観賞した3Dと銘打つ数々の映画に辟易していた私ですが、この映画で初めて3D技術を使うことの意味、すばらしさが理解できました。 映画館でその醍醐味をみなさんに味わってほしい作品です。
何度観ても飽きません。 脚本の強さ・演出力、そしていわずもがなの特筆ものの飛翔感の楽しさ。その良さは2Dでも存分に味わえます。関東以外の方はDVD出たら是非観てください。生き生きと画面いっぱいに表現するヒックやトゥースはポスターの何千倍、何万倍も魅力的です。
でもやはりこの作品は重低音鳴り響く劇場の大画面で観たい。唸り声を上げるドラゴンが縦横に飛び回る世界を映しながら、ヒックの肌に透けるそばかすや風になびく髪までもが美しく繊細に描かれています。 3Dは空飛ぶドラゴンたちの動きに怖いくらいの臨場感を与えていただけでなく、トゥースをはじめ個性的な登場人物たちのくるくると変わる表情や主人公の心の揺れをより際立たせていました。
いかにもアメリカンなヒックの会話を、軽妙な味付けで演じていらっしゃる日本の声優さん?にも拍手したいです。各所で笑って、泣きました。
他にも心揺さぶられる音楽、トゥースのかわいさ・かっこよさ、苦くも納得の顛末、語りつくせません。とにかく一人でも多くの方に、映画館で、観てほしいです。 宣伝力や公開時期のせいでふるわないなら、残念すぎます。 六本木で続映していましたが、10/22上映終了決定(涙涙涙)まだの方は今のうちにGO!
<追記>
ついに明日上映終了です。 何度も観て思うことは、やはりこの作品は素晴らしい。 大人にも子どもにも様々な意味で夢を与えてくれる、力を持った作品だと思います。 私もトゥースの背中に乗って鳥のように大空を駆け巡ってみたい!人生折り返し地点にいる私にそんな気持ちを思い起こさせてくれたこの映画に感謝しています。
DVDの発売も決定したようです。3Dであろうとなかろうと素晴らしい脚本と演出、あらたなファンを増やしていくと確信しています。 できうることならば、もう一度映画館で、全国展開での再上映が実現しますように…と願わずにはいられません。

もぐもぐ7572