「爽やかな友情と青春ってやっぱ素晴らしい!強く進む生き方が気持良い」風が強く吹いている Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
爽やかな友情と青春ってやっぱ素晴らしい!強く進む生き方が気持良い
三浦しをんさんの原作を読んでいないのですが、とても観終わった後の爽やかさが嬉しい映画でした。
私は出身も、そして今も神奈川在住なので、丁度今の11月のこの時期は、箱根駅伝の応援に行きませんか?と言う広告がポストに配られる。
しかしスポーツ音痴の自分は、「わざわざ、正月の寒い中をどうして、あんなに過酷なスポーツに挑むのだろう?」と沿道の応援はおろか、TV中継すら、初めから最後まで、全部を観た試しが無かった。そして学生時代も、運動部にいた事が無いので、この手のスポコン映画は楽しめるのかな?といつも敬遠する傾向にあった。しかしそんな考えは改めるべきだとこの映画が教えてくれたのだ!
日の出のランニングから始まるファーストシーン、そして何やら一癖二癖も有りそうなメンバーが次々と紹介されていく、その人物設定も実に不自然を感じさせ無いのだ。
若い頃は結構みんなハジケテ、個性的なものだもの、そんなみんなをまとめてランナーへと育て上げて行く元エースランナーのハイジ役の小出恵介が素晴らしく光を放っていた。一方天才ランナーでありながらふとしたトラブルから監督を殴ってしまい期待のランナーから外れてしまうなどトラブルメーカーのカケルを演じる林鞬遣都のとんがりキャラを体当たりで熱演してくれていたのがとっても印象的だ!
この映画がどうして、こんなに気持ちが良いのか考えて見ると、誰一人としてランナーを諦めてしまう人がいない事だ。ぎりぎり10人で、駅伝には補欠選手が誰一人存在しない事で、チームみんながそれぞれに自分の責任を果たしていくからだ。自分は他のみんなの為に存在し、仲間のみんなも自分の為に存在していてくれる事を知っている。その想いを深く胸に刻み込んでいるが故に、日夜過酷なトレーニングに耐えていくその姿が、清々しく
映画でありながらも、私はまるでこの寛政大学の陸部の応援団になった様な錯覚を覚えたのだった!
多くのスポコン映画に限らず、サクセスストーリーものは劇中必ず途中下車して、夢を諦めて去って行くキャラクターを登場させるのが普通のパターンで、そしてそんな困難を乗り越え続けていったものだけが、勝利すると言うものが殆んどだ。しかしこの作品は陸部長兼監督、そして寮母でもありリーダーのハイジがみんなをまとめ育て、一つの強い絆をチームの中に創り上げていく。
全員が協力する事で、強力な今日力を産んで行く。それぞれみんなが自分自分の力を伸ばしているのだが、お互いを信じて同じ目標に共に向かう事でみんなで勝利すると言う人間本来の繋がりの大切さを自然と押しつけがましさ無く、爽やかに描いてくれたのが嬉しいのだ!
今、私達は結構廻りの人々への感謝の気持ちを表現する事の大切さを忘れ、自分の栄光のみを願う傾向が私も含め強いものだ。ラストもみんなの為にハイジは決して走る事を放棄しないし、みんなもハイジの気持ちを察してゴールの最後まで走らせる。走る事は孤独な個人競技で自分との戦いで、個の世界であるが、しかし個の繋がりこそが人間の生きる姿である事を教えてくれた、この映画にエールを送りたい。そして箱根駅伝もこれからは楽しく応援してみたい!