「ヒラヒラよりシンプルを選ぶ理由。」ココ・アヴァン・シャネル ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒラヒラよりシンプルを選ぶ理由。
今作を観て思ったのは、
シャネルの原点がいかに創造されたか、よりも、
子供時代の痛烈な体験が後々まで影響することだった。
原題・シャネルになる前のココ。
ココというのは彼女の愛称で、本名はガブリエル。
母親の死後、父親に見捨てられ、姉と共に孤児院で
育つ。お針子をしながらキャバレーで歌手を夢見る日々。
当時、女性が自立して仕事を持つことなど考えられず、
貧乏女性が財を築くには、富裕な男の玉の輿にのるか、
一生下働きでコツコツと貯めるか(これは難しいもんね)
…というわけで、ココはアッサリと将校の愛人になる^^;
姉に比べると負けん気が強く、口も悪いわ気も荒いわ、
そして当時のフリフリ♪ファッションを毛嫌いするあたり、
私には母を裏切った父への恨みがかなりなのだと感じた。
男(愛)を信じてバカな夢を見るよりも、もっと現実を見て、
自立しなければならないと、意気込みだけは相当なもの。
ただ^^;理想だけでは夢は成り立たず、アッサリと自ら
愛人になる道を選ぶ…このあたりは時代ゆえに仕方ない
のもあるだろうが、実は愛を探し求めてたのではないか。
自分の存在価値を認めてほしい。
子供時代に叶わなかった夢はそこに起因する気がする。
わざと場違いなファッションを好むのも、
(才能とは別次元で)自意識から生まれるように見える。
女らしさを否定することで、自分は他の女とは違うのだ
と懸命に訴えているのだ。華々しいファッション界からは
想像のつかない地味さである。
だがしかし…。それが思わぬ旋風を起こすのが面白い。
鳥のような羽帽子から麦わら帽子へ。
機能性とシンプルを兼ね備えたデザインが、のちに
どんどん女性たちの間で広まり、好評を博していく。
何が起こるか分からないのが人生、ココ本人も自分の
個性がこれだけ評価されるとは思わなかっただろう。
思惑とは別のところで成功をおさめ始める彼女だが、
自分を認め、愛してくれる男性に巡り逢えた経験こそが
本当は最も手に入れたかった財産だっただろうと思う。
ついに日向の存在を手に入れられなかった彼女だが、
決して不幸ではないと思う。あんな人生、欲しくても
貰えるものではない。しかも自身で選びとったのだから。
(野心に満ちた女性は、白馬には自分が乗るんですねぇ)