シェルブールの雨傘のレビュー・感想・評価
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恋愛の熱を冷まし、雨も凍らせる戦争
“Les Parapluies de Cherbourg”はEmery夫人の営む傘店の名前。
シェルブールを舞台に、傘店の娘Geneviève Emeryと自動車整備工場に勤めるGuy Foucherの恋愛を1957年11月から1963年12月まで追った物語です。
序盤がつまらないのですが、少しの辛抱、有名なメロディに歌い出した所から、ぐんと話が面白くなります。というか、最初から最後までずっと歌っているミュージカル/オペラと言えど、歌らしい「歌」はあの名曲だけ??
未来を約束していたが、戦争によって引き裂かれた若い男女。
陳腐な設定ですが、その「よくある戦時中恋愛作品」と決定的に違う所が一点…、女が決断を下すのです!! ”Madame Butterfly” も ”Miss Saigon” も ”I Girasoli (ひまわり)” も、行く先々で「目の前の宝石」に飛び付くのは男。純粋な女は愛する男を待ち続けた結果、男に裏切られるのです。本作で裏切られたのは男のほう。さすがフランス女性!愛する男の子供を身ごもっても!現実的な判断をするのです。この点で星をおまけしました(^^)。(恋愛作品はあまり得意ではないので、女が率先して裏切るパターンをそんなに観てないだけかも知れませんが。)
Guyの乗る列車を見送る際、絶対追いかけて走るだろうと観ていると、Genevièveさん、全く走らないんですよね(^^)。諦めたように踵を返してしまう。既にここからお決まりの流れとは何か違う匂いがします。
戦争がなければ、Guyが徴兵されなければ、母親の反対を押し切ってでも2人は結婚したでしょう。しかし、実家の家計は傾く一方の中、産まれてくる子供の父親が戦争から生きて帰れるかどうかも分からない。ただでさえ出産・育児と不安な将来は、戦争で更に先行きが不透明。そんな時に求婚してきたのは、経済力がありお腹の子供も受け入れるという寛大で理想的な男性。Genevièveは母親の勧めもあり「目の前にある確実な宝石」を選びました。
除隊後、仕事も恋人も叔母も失って自暴自棄だったGuyは、側にいて支えとなってくれる女性を選びました。
GenevièveもGuyも、互いにその時必要だと思った相手を選んだのです。
偶然を装っていたけど、風の便りでGuyの帰国と起業を聞いて、Genevièveはあえてあのgas stationを選んだのでしょう。煙草を吸おうとするGuyの後ろ姿をマジマジと盗み見する所から、捨てた男の状況が気になっているのは間違いありません。持論ですが、未練がましいのは男性に多いと思っています(^^;)。正直、女性が過去の男を振り返るということは、よほど今の男に不満があるのでしょう。それだけGuyを愛していたとも言えますが、どこか釈然としないまま終えたかのような結婚式からそれまで、「自分の選択は正しかったのか」とずっと自問を繰り返していたのかも知れません。
Rolandは結婚前から出張が多そうでしたから、恐らく結婚後も仕事が忙しく留守がちなのでしょう。さすがにクリスマスに仕事をしているとは思えないけど…なぜか娘を迎えに行った帰りという車中に夫の姿はない。もしや夫はそのまま義母(つまり姑)のもと?Guyの不在で味わった孤独を、別の男性と結婚しても味わうことになったGeneviève。クリスマスだというのに喪中姿のまま。毛皮を着て高級車に乗って、金銭的には恵まれていても、多分彼女はそんなに幸せではないのです。(もし自分だけ幸せになったということでGuyに対し罪悪感を抱いていたなら、Guyの返事に安堵する筈です。)
冷たい雨を遮る傘はもうない。
雨が雪となったシェルブールでは、男も女も心が冷め、もう恋愛の熱は戻らないのです。
理性的に見えたRolandの求婚も失恋の反動が多少あったのかも知れませんよね。
じゃあ一番幸せを掴んだのは、身寄りのなかったMadeleine?Genevièveの結婚式を見て、よっしゃ〜というあの微かな表情(^^)。ひっそりと想い続けた恋愛が実りました。好きな男に愛され大切にされるのが一番なのは間違いないですね…。
Emery母娘は勿論、Madeleineもとても現実的でした。そして三人とも美人!
子供の名前がFrançoiseとFrançoisで、互いに思い描いていた理想の通りっていうのが何だか切ない…。
仮に妊娠していなかったらどうだったんだろうと考えました。そこまで不安にならずに済み、Guyを待ち続けられただろうか。それとも迷いなくRolandと結婚してRolandの子を授かったら、もっと幸せになっただろうか。。
舞台も衣装も色彩がとても鮮やかでした。壁紙とマッチする服装というのが面白いです。
色で人間関係を上手く表していましたね。
基本的に両想いになった2人は同系色。
母と娘の服は、最初はピンクと黄色、それから赤とピンク、その後対立が増すと反対色、その後同系色に。Guyを想う時は水色、Rolandを想う時は母と同系色。
Rolandがデートで水色のワイシャツに白いスーツの時、Genevièveのドレスは水色にピンクと紫と緑が混ざっていて、まだ迷いがあること、そして上から白いコートを羽織っていて、Rolandに染まりつつあることも分かります。ちなみにウェディングヴェールを試着している時も、別のものですが「迷い色」のドレスを着ているんです。
Foucher一家の仲睦まじさと一体感も同系色で伝わります。最初の自動車整備士達と同じ青系と緑色と黄色なんです。家族って仕事仲間というか生活する上での同志のような一面がありますよね。
Genevièveが最後に着ている服の黒は、混ざれば全ての色を飲み込み消し去る色。他の色は混ざると別の色を生み出せることを考えると、孤独です。
Guyは見るからにイタリア系、実際俳優さんもイタリア人。茶系と青系の組み合わせがイタリア男性のお洒落の定番なんだと。
Catherine Deneuveがフランス人形かリアルBarbieのように可愛くてきれい!他の男に取られるのも無理はない?!って思えるほどでした。
煙草を吸い出す妊婦にはびっくり。
最初はちょっと退屈ですが、途中からそう来るか?!と女性の現実的な判断に驚き、名曲によって切なさが尾を引く作品でした。
色彩感覚
音楽と色彩・佇まいの美しさに圧倒される。
遠距離恋愛の悲劇。
よくある話と言えばよくある話だけど、だからなおさらその悲劇に我がごとのように心かき乱される。遠くの親戚より近くの他人とは良く言うけど、だけどね、やっぱり純愛を期待しちゃうのに…ああ。
現代と違うのは、未婚の母に対する風当たり。
今でこそ珍しくはないけれど、この映画の設定の時代ではあり得ない、ましてやある程度の階級に属する女性には。
カトリックの国。国は違うけれど、『あなたを抱きしめる日まで』が頭をよぎる。
そんな時代を考えれば、「アルジェリアがあんな状態だから結婚は」と言いながら子をなすようなことをしていくなんて、ギイも無責任だなあと親の立場からは思う。
それが、16歳と20歳の青春なんだと言われてしまえば、そうなんだけれども。
全編歌。吹き替え。
なので今ひとつ演技的には深みにかけるけど、なんて斬新な試み。オペラを想定したそうな。
特筆すべきははその色使い。
ファッションは元より、インテリアとの兼ね合い。
一見の価値あり。
インテリア・着こなし、佇まいの手本にもしたい。
その中でも、オープニングの傘の乱舞が見事。
映像と音楽の魔術にかかったまま、物語に誘われる。
この映画を普遍のものにしているのは、なによりラストの展開だろう。
秀逸。
数年後、クリスマスの出会い。これがまた超現実的。
人生なんてそんなものさ。そうするしかないのさ。そう思いながらも二人の胸の内を推し量りながら、涙がはらはらと。
色数は少ないながらも、圧倒的な色と音楽に、いつまでも余韻に浸りきってしまう。
とはいえ、
基本ドヌーブさんありきの映画。
ジュヌヴィエーヴのこの世のものとは思えない美しさと、マドレーヌの地に足ついた美しさ。母の品格ある美しさが、美しい音楽と相まって、夢の世界に連れて行ってくれる。ピリリと胡椒を効かせた甘い世界。
戦争が引き裂いた二人の悲劇。長距離恋愛の悲劇。周りにもよく転がっているし、ドラマの題材としてはありきたりのもの。
その王道の恋愛物語を、シンプルに枝葉なく描き出した映画として、この映画以上のものがこれからも生まれるのだろうか?
叶わなかった恋に想いを馳せつつ、夢に浸れる映画です。
違う人生の可能性を感じた時の苦み
全編の台詞が歌になっているのは、ミュージカル初心者からすると気恥ずかしくなってしまったが、中盤から慣れて、物語に入り込むことができた。
ラストシーンで、ガソリンスタンドを訪れたのは偶然ではなく、別の人生を歩んでいたかもしれない自分を探しにきたのではなかったか。
「あなた、幸せ?」という問いに女性はあったかもしれない自分の人生の幻想をすべて込め、男性が幸せだと答えたところで両者の人生の接点が完全に失われたように感じた。
時として、人生では大きな選択を迫られることがあり、選択をした後で振り返ってみると、別の選択をしたときに歩んだはずの別の人生がまざまざと想像されることがある。そんな時、なるようにしかならないんだと背中を押してくれるような作品である。
全部、雪のせい。
フランス語のミュージカルは初めて見ました。単語がちょいちょい聞き取れるな、くらいなのでわりと純粋に音楽を判断できてる気がします。音楽ステキ〜。
ヒロインのコートとワンピースがめちゃんこ可愛い。
ドールハウスの中みたいな家だし、家具も小物も全部作り物っ感がすごいあります。これって当時普通なのかな?
それいる??どこで売ってんの?みたいなもんばっかあります。
「僕を待っててくれるね?」なんて手紙で書いちゃって、いざ帰国したらこの有様。あちゃーって感じですね。子供いんのになぁ。
1部はなんだこりゃ〜って感じで、2部になってふーん?みたいな。でも3部で一気に面白くなります。なんか、勉強したことが全部繋がった感覚(なんやねん)。
唯一共感できたマドレーヌ。ほんとは前に好きだった人忘れられないんじゃないの?私は代わりなんでしょ?絶望の果ての選択でしょ?
っていう言葉はすごかった。腹割って話して良かったね二人とも。
「回り道をしてきたの」って言葉が全てじゃないですか。女は簡単に捨てるくせに、いつまでも相手の事嗅ぎ回っちゃうんです。
映画1本取れるような思いっきりの恋愛、何も考えずにやってみたい。
反戦映画なのかな。待てなかったか。
『シェルブールの雨傘』(1964)
タイトルだけなんだか知っていたが、NHKBSプレミアムから観てみた。外は雨だったし。全てが音楽に乗せた歌でセリフが成り立っているというのが、私はそういうミュージカル映画というのは観たことがなく、それだけでも面白い感じだが、なぜか高級な感じがする。20歳と17歳の恋人同士が結婚したいが、女性の母親が若すぎると反対する内容から始まった。この頃字幕が面倒くさくて日本映画ばかりだったし、字幕も英語の聞き取りになるかと思ってアメリカ映画が多かったが、フランス映画であった。パルムドール受賞作品だったのか。日本の受賞作では『うなぎ』は観たが、『万引き家族』はまだ観ていない。カトリーヌ・ドヌーブも名前だけは知っていたが、なんかコマーシャルかなんかで薄っすらみたことはあるのか、この映画では若いからか、それほど私の目では絶世の美女というようには見えないのだが、世界的大女優なのだろう。主題歌のメロディーは知っていた。よく流れてくる曲だ。スタンダードだ。和訳は初めて知ったが、戦争映画なのか。これを書いている時点で主役二人と娘役のお母さんまでご存命とは長生き出演者である。まるでフランス語?はわからないが、『ジュテーム』とか『モナムール』とかは聞いたことがある。お母さんは『ママ』か。男は2年間の兵役で二人は泣く泣く別れたが、女は生活苦から男の子を妊娠していたのに、別の金持ちの男に惚れられて妊娠していても良いからと承諾し、女は別の男と結婚してしまった。その後で男が兵役から帰還してくる・・・。事をおばから男は告げられる。やがて男は自動車修理工に戻ったが、上司と口論し辞めてしまう。それだけ荒れていた。それにしても改めて、セリフの全部が歌になっているのも変と言えば変な気もするが、変に心地よい気もする。ラストシーンに向かう前までに、別れた男女双方とも堅実な別の伴侶を持ち子供もいて(女性側は別れた男との子供だが)それぞれ幸福な最中に、偶然雪の日に男性の経営するガソリンスタンドに女が給油に車を止めた。束の間に語り合い別れる二人。その束の間のシーンが複雑かつ諦念を感じる雰囲気を醸し出し、有名な音楽が壮大に添えられる。俳優と女優の演技もそこで真価が発揮される。愛したはずの男女の片方が待てなかったためのさみしい出来事であるが、そんな人を支えてくれる新たな人が出来るのも実は悲しい。女が男に幸せかと聞き、男が幸せだとはっきりと応じて、女は出て行く。連ドラの『半分、青い。』も似た出来事であるが、基本的に愛し合った最初の男女が添い遂げるほうが美的なのだと思いたい。
当時は画期的な演出、でも自分は好きではない
総合:55点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:40点|ビジュアル:65点|音楽:80点 )
常に音楽に乗せて喋るのが不自然で、当時としては画期的だったのかもしれないが自分は嫌い。物語の展開はほぼ全てが室内における会話でのみ進展して具体性がなく面白みがない。手紙もろくに書けなかった厳しいアルジェリアのことなど一度も映像に登場しない。次の場面では一気に進展があってその過程も映し出されない。このような演出に不満があって退屈する場面が長かった。
電車での別れの場面と最後の給油所の場面だけは良かった。室内の色彩とせつない音楽は印象に残った。
結果幸せならいいじゃない!! もちろん途中は切ないけど。 若いんだ...
シェルブールの雨傘 ~ それぞれに掴んだ幸せ
この映画の大きな特徴は全編を通して流れるミシェル・ルグランの甘美で抒情的かつ、流麗だが、やや荘重な音楽にすべてのセリフがそれに絶妙に乗る、極めて異例な音楽劇であること、それが非アメリカ的で観る者の心に抵抗なく滑り込んでくることとである。さらに当時、はたちくらいのジュヌヴィエーブ ( ドヌーブ ) の瑞々しく、やや幼さの残る初々しさにも注目してよい。余談だが後にギィと結婚するマドレーヌにこそドヌーブを凌ぐ大人の魅力が垣間見られる。もう一つ注目していただきたいことは映像処理の見事さである。ピンクや赤 ( 場面によっては薄いブルー ) を主に淡くソフトな色調を押し通し、それがこの映画の華美と他に類を見ない魅惑的な叙情の流れに寄与している。
ストーリーは "すれ違いの恋愛劇”に部類すると思うが、恋愛には、優しさ、理解、思いやりが必要であること、また月並みだがいくら狂おしい恋愛も将来の経済的後ろ盾が必要であることを物語っている。だからドヌーブも熱愛してはいるが、一介の自動車修理工に過ぎず、徴兵されて今現在の生死も分からぬギィに捨てきれぬ思いがあっても、ギィの子を宿していることを承知の上で、それでもなおプロポーズする裕福な宝石商に同意する。これが真っ当な現実であることもこの映画は物語っている。さて無事復員したギィは、これにがっかりするが、失意を乗り越えて、おばの遺産と金策して得た資金を元手にガソリスタンドのオーナーになり、かねてからの幼なじみのマドレーヌと結婚し、一児をもうける。これもマドレーヌの当然の選択である。ただガソリンスタンドでの別れのシーンでドヌーブの表情や話しぶりがやや空ろなのは何故か。
” シェルブール...”は、こうして幸せをつかんだ二組のカップルをそれぞれに描き分ける。
見始めの違和感を忘れずに
美しきミュージカル映画
レンタルDVDにて観賞
全編歌のみとなると…
「ロシュフォールの恋人たち」が本作の製作陣によって作られたことを知り鑑賞。
ストーリーはシェルブールの街を中心に二人の男女の恋を描くもの。ストーリー自体は今となっては至ってありきたりなもの。ただ、1964年の本作公開当時は全編歌のみのミュージカル映画は画期的だったと思われる。シェルブールの街並みや情景はとても美しく、フランス映画特有の色彩美はこの時代の作品からも感じられる。
個人的には、「ロシュフォールの恋人たち」の方がストーリー、音楽共に好みだった。
雨はやがて雪になる
切ない
おしゃれな配色、ファッション。
カラフルなイメージに反して内容は切なく悲しいものでした。
COCCOさんの強く儚い者たちが頭をよぎった。
ジェヌヴィエーヴの選択は仕方なかったのかもしれないがギイが気の毒すぎ。しあわせになれてよかったよ。
ジェヌヴィエーヴは終始不幸な顔をしていて、あまり好きなタイプのヒロインではなかった。
当時の女性は相当この映画に支えられたことと思う。
1964年公開、ということはほぼ半世紀前の映画なのね、
音楽映像キャスト内容完璧だと思います。
セリフがすべてミュージカル。
女の幸せとはなんなのか。
愛し合う幸せと愛される幸せ。
この映画における愛してくれる男の絶対的な安定感。
主人公は揺らぐ心の中、社会的に正解の恋を選ぶ。
最後に元恋人と偶然出会うが、お互い幸せなことを確認して去る。
切ないけれどもそれで正しかったのだと思えるラスト。
当時の女性は相当この映画に支えられたことと思う。
まだまだ「好き」の気持ちだけで無茶な結婚とかできない時代だったもの。
それを考えても、本当に素晴らしい映画。
全95件中、61~80件目を表示













