「小銭に笑えば小銭に泣く。」英国王給仕人に乾杯! ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
小銭に笑えば小銭に泣く。
名画座にて。
公開時にかなり観たくて、とても楽しみにしていた作品だった。
これは名画座にくるだろうとタカをくくっていたら(ヤンっぽい?)
やっぱりきた。しめしめ…。こういう計算高さは人間の常?^^;
うーん、ただしかし。
想像とはまったく違う内容の作品だったので、少しビックリした。
確かに…チェコ人が英国王の給仕をするはずなどないのだが、
でも題名に書いてあったら、そう勘違いしてしまうではないか?
…あ、そうか。
こういう勘違いや思い上がりを、シニカルに描いているってことは
題名からすでに騙しに入っていたってことか。だとしたら確信犯。
私はチャプリンの作品は大好きだが、これはちょっと違うと思った。
言いたいことは分かるし、中盤からはチェコの激動史と重なるので
笑ってもいられなくなる。よく描かれているし、H度もかなり高め^^;
軽やかな語り口は、確かに流暢な旋律を描いて魅せる。
うーん。。ただこれは私の好みの問題なのだが^^;
私は多分、この主人公ヤンが好きではなかった(主に青年期の)
小銭をばら撒いてそれを観察する仕草とか、いちいち小賢しくて
巧いとか、軽やかというよりも、いまいましくて仕方なかった。
まぁハッキリ言ってしまえば、あの顔の表情が嫌いなのだった^^;
(すいません、I・バルネフさん)
もちろんナチスに肩入れする気など毛頭ないし、
彼の奥さんのそこまで!?という価値観にも苦笑いしてしまったが。
いちばん共感できたのは、M・フバのスクシーヴァネク給仕長で、
最後まで彼は誇り高くチェコ人魂を貫き通して、そこを追われる。
給仕の腕は人一倍だが、生き方はそれほど巧くはなかった。
ちなみに彼は、小銭をばら撒いて人間観察などしていない。
女に色目も使わないし、ヤンをチビと罵り後頭部を叩いたりしない。
唯一「英国王に給仕したことがある」とヤンに自慢をするのだが…^^;
激動の時代を生き抜く、というのはどういうことかを教えると共に、
人間の強かさ、脆さ、誇り高さ、そして優柔不断(とくに男性のね)
を巧くテーブルにのせた感じだ。給仕は巧いが、味はそれぞれ。
しかし、とても満腹にはなった^^;
(老年期のヤンはけっこう好きだ。相変らず色目を使ってはいたが)