「 個々のエピソードは見せるものの、起承転結の展開がなく、城の完成に向けて一本調子に進んでいったところが残念です。」火天の城 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
個々のエピソードは見せるものの、起承転結の展開がなく、城の完成に向けて一本調子に進んでいったところが残念です。
城郭マニアにとっては、安土城がCGで完璧に復元される映像だけで、納得してしまう作品です。
果たして、指図(図面)争いで決まった本作での安土城の内部は、吹き抜けであったのでしょうか?(スクリーンでご確認を!)
ただ映画としては、一本筋の通ったストーリーが欲しかったですね。西田敏行が主演しているだけに、岡部又右衛門の存在感には非の打ち所もないくらいはまっています。日本一の城作りの情熱を伝えてくれました。
但し、信長暗殺や安土城建設の妨害といったサスペンス要素のものから、妻の死、仲間の死や岡部一門の番匠たちが力を合わせて、城の骨格のゆがみを補正するというような感動シーンまで、ばらばらに散りばめられていて、統一感が弱いのです。
個々のエピソードは悪くないとしても、何か一つ安土城完成をピークとするメインストーリーが欲しかったです。
激動の戦国時代にありながら、合戦シーンが皆無という珍しい時代劇です。
配役としては、信長を演じた椎名桔平は、気迫ある演技で信長らしさを際立たさせていました。妻・田鶴役の大竹しのぶは控えめな演技で印象が弱かったです。
又右衛門の娘役福田沙紀は、ただ可愛いだけの存在。もう少し表情を前に出して欲しかったです。
建築途中の安土城は、セットを組んでいて、巨大な親柱がそびえ立つところは、圧巻です。あれはわざわざ本作品のために取り寄せたものでしょうか?
ただ完成した天主の全貌は、一見してCGと分かるもの。製作を担当した白組には、もう少しCGのリアルさを追及して欲しいと願います。
個々のエピソードは見せるものの、起承転結の展開がなく、城の完成に向けて一本調子に進んでいったところが残念です。もう少し、クライシスやアクシデントを強調した方が見応えが出来たことでしょう。