「木曾檜は強く美しいが・・・」火天の城 ミアさんの映画レビュー(感想・評価)
木曾檜は強く美しいが・・・
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なぜ「火天の城」というタイトルになったか。その由来が原作では序盤に一度そして最後にもう一度出てくる。
原作を読む前に映画を見ていたら、邦画にしては巨額の費用をかけた画面に圧倒されていたかもしれない。
組み上げられた木の美しさ、しなやかさ、たくましさは一見の価値がある。
だが、番匠達の手つきは日曜大工にしか見えず、岡部一家の類型的な人情劇に感情移入する事はできなかった。
原作では岡部又右衛門は二人いる。棟梁とその息子の二人である。
どの時代にもある親子の軋轢や、しょせん他人でしかない夫婦間の諦感・それを通り越した時に芽生えてくる家族の繋がり等が、すっぱり切り捨てられているのは仕方ないとしても、説得力のない口先だけのせりふが気になった。
また、うねと言う乱波(忍びの者)の設定、木曾の大庄屋甚兵衛が何故檜を譲る事になったか何故命を落としたのか等無理やりこじつけてまとめてしまった感が否めない。
もちろん、原作をそのまま映画化するには予算的にも上映時間からも無理がある事はよくわかる。
すばらしい素材であるだけに、脚本をもう少し練って後世に残る作品にして欲しかった。
主役は安土城であり、信長・岡部又右衛門親子その他築城に関わる人間模様でもあるが、原作の骨太さ面白さには残念ながらはるかに及ばない。
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