劇場公開日 2008年12月20日

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「超常現象モノとしありがちな演出とは一線をおき、愛するものを失った喪失感を最高に美しく描いていて成功していると思います。但し惜しむらくは、ラストの結び方が少し性急しすぎて、強引になっていること。」永遠のこどもたち 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5超常現象モノとしありがちな演出とは一線をおき、愛するものを失った喪失感を最高に美しく描いていて成功していると思います。但し惜しむらくは、ラストの結び方が少し性急しすぎて、強引になっていること。

2008年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 はっきり言ってギレルモ監督の『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』に失望した人たちが納得できる一本です。
 なんと言ってもラストのあの痛い結末は、ギレルモ監督ならではのもの。ギレルモ本人の監督作品でもなく、クリーチャーも一切登場しません。けれどもそのスピリットは本作に色濃く表されています。
 その点『ヘルボーイ』は、ハリウッドの商業主義に迎合してしまったキライはあります。
 『パンズ・ラビリンス』以上の衝撃的な結末を迎えるのですが、本作はさらに主人公ラウラと子供達が触れあうシーンが登場。ここで『永遠のこどもたち』のテーマの意味が明かされて、とても感動してしまいました。怖いのに感動してしまう作品としては『アイズ』に似ていると思います。
 ただここで 『パンズ・ラビリンス』と違って、エンディングは終わりませんでした。
 そのあとで、ラウラがどうなったのかネタバレシーンが追加されており、う~ん、そういうことなのね(T^T)と、複雑な気持ちとなった次第です。こんな気持ちにさせるところが、ギレルモプロデュース作品の所以ですね。

 もう一つ特徴的なのは、『永遠のこどもたち』のラストに向けた伏線の細かさです。冒頭の少女時代のラウラが子供たちと遊ぶシーンから、すでに後半の重要なシーンの複線となっております。
 息子シモンが突如行方不明になってしまうところから、不思議な現象がラウラの身の回りで起こり始めます。その表現も当初は『ラビリンス』同様にラウラの空想かな?と思わしめる展開。徐々に何か目に見えない存在が関係してそうだとラウラに気づかせていきます。
 ホラー作品と異なる点として、異形のモノや残虐さを一切出さず、恐怖感をたっぷり味わさせてくれました。

 そして中盤のハイライトとして、霊媒師(ちなみに演じているのは、名優チャップリンの娘)を招き寄せて、かつてラウラも子供時代を過ごした舞台となっている孤児院に何が起こったのか霊視によって明かされます。
 このときシモンは行方不明になって、すでに9ヶ月。
 誰もが、この不思議な現象と霊媒師の話でシモンは神隠しにあったのだろうと思わせるところに徹底して伏線を張っていくところに巧みさを感じたのです。
 果たしてシモンはどこにいたのか!どうなったのか!衝撃のラストのお楽しみと相成りまするぅ~。

 本作は、ミステリアスな展開以上に、生きていると信じ探しつつけるラウラのシモン対する母の愛情の強さを感じさせてくれます。シモンはHIV感染者で余命幾ばくもなく、おまけに血のつながりもない孤児でした。それでもわが子同然に扱い、命がけで行方を捜そうとしたその思いはもスクリーンからも伝わってきて、涙を誘われることでしょう。
 やはりラウラも孤児であったことが理由として強かったのだと思います。

 そんなラウラ自身の孤独感を表現しつつ、未知の存在へ果敢に立ち向かっていく強さをも秘めたラウラをベレン・ルエダが好演していました。

 ヨーロッパでスピリチャルムービーとして大ヒットした本作ですが、超常現象モノとしありがちな演出とは一線をおき、愛するものを失った喪失感を最高に美しく描いていて成功していると思います。

但し惜しむらくは、ラストの結び方が少し性急しすぎて、強引になっていること。そして『永遠のこどもたち』との触れあうところをもう少し長めに描いてもらったら、もっと感動できたのにというもどかしさも感じました。
 ぜひ見てきた人のご意見も聞いてみたいです。

流山の小地蔵