シリアの花嫁のレビュー・感想・評価
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ある女性が嫁ぐ日の物語
冒頭、結婚式の準備に向かう花嫁とその姉、そして姪っ子たち。
晴れの日のはずなのに、花嫁の表情は浮かない。
その映像から伝わってくる空気にも、晴れ渡った空と、姪っ子たちの楽しそうな雰囲気の中に、色濃い影がある。
そして、花嫁がウェディングドレスに着替えたとき、その理由がわかる。
今日が、姉妹の今生の別れであると。
ドゥルーズという地域は、元々はシリアだったが、イスラエルに占領された。
しかし、その住民たちはイスラエル国籍になることを拒み、「無国籍」になった。
シリアとイスラエルに国交はない。
ドゥルーズの人間が「境界」を越えて、一度シリア領へ足を踏み入れれば、「シリア国籍」が確定し、二度とイスラエル占領下のドゥルーズには戻れない。
そのドゥルーズから、シリアに嫁ぐ花嫁の胸中は……。
パスポートを手に、家族と二度と会えないことを受け入れて、国境を越えていく花嫁の表情が印象的。
世界には、こんな理不尽な思いをしている人たちがいるんだね……。
嫁ぐことの決意。
名画座にて。
日本でも昔々の花嫁さんは(決めつけてますが^^;)
一度夫の家へ嫁げば、おいそれと実家へ帰ることはできず、
今みたいに月に何度も「里帰り」なんてできなかっただろう。
そんなことを考えさせられる作品。
今作はそんな軽いものでなく^^;シリアとイスラエルの問題
を背景にしているが、とはいえ、花嫁さんがずーっと純白の
ウェディングドレス姿で境界線に留まっている珍しい作品。
なぜゴラン高原に住む花嫁がシリア国籍の男性と結婚する
ことになったんだろう…?ちょっとそこが知りたかったが^^;
好きな人の元へ嫁ぐ花嫁、それなのに表情が暗い。
見渡すと姉をはじめ家族までもが暗い。なんで?と思ったら
そうか、花嫁は嫁いだらもう二度と此処へは帰ってこれない、
そんな『無国籍』の状態にあったのだった。
妹を心配する姉役、H・アッバスがひたすら目を見張る演技。
心配ないから、大丈夫だから、、、と繰り返すお姉さんが
一番悲しそうに見えたのは私だけか。。
父や兄弟の問題も露呈されるが、ともあれテーマは結婚式。
この花嫁がアチラ側へ嫁げなければ、また果てしない手続き
(すごく待たされるらしい)の嵐が待ち受けており、家族は
何が何でも今日中に嫁がせたい!(爆)
当人には大変申し訳ないが、なんなんだ…?と思うほどの
手際の悪さ。間に入った赤十字のお姉さんも境界線を越えて
行ったり来たり…。どうしてめでたい結婚式ですら、そんな
イジワル(にしか見えない)をするんだろうかと恨めしくなる。
手続きが出来ず、何時間もその場で待たされる花嫁と一族。
そしてアチラでは花婿とその一族。
あー笑っちゃいけないシーンなのに、あまりに滑稽すぎる。
だって、こんな結婚式、観たことないのだ^^;
後半、ふと思った。ひょっとしたら。。
こうやって時間を引っ張って引っ張っていることで、花嫁は
家族との最後の時間を味わえているのだろうか。なんて。
だからラストで、もういいわ!!と云わんばかりにすっくと
立ちあがり、堂々とひとりで歩いていく姿に感動できる。
意を決し、他に関係なく、嫁いでいく娘の凛とした後姿。。
ふと振り返って家族を見る彼女の目がとてもキレイだった。
(ホントはこのくらいの決意で嫁がないといけないのよね^^;)
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