「嫁ぐことの決意。」シリアの花嫁 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
嫁ぐことの決意。
名画座にて。
日本でも昔々の花嫁さんは(決めつけてますが^^;)
一度夫の家へ嫁げば、おいそれと実家へ帰ることはできず、
今みたいに月に何度も「里帰り」なんてできなかっただろう。
そんなことを考えさせられる作品。
今作はそんな軽いものでなく^^;シリアとイスラエルの問題
を背景にしているが、とはいえ、花嫁さんがずーっと純白の
ウェディングドレス姿で境界線に留まっている珍しい作品。
なぜゴラン高原に住む花嫁がシリア国籍の男性と結婚する
ことになったんだろう…?ちょっとそこが知りたかったが^^;
好きな人の元へ嫁ぐ花嫁、それなのに表情が暗い。
見渡すと姉をはじめ家族までもが暗い。なんで?と思ったら
そうか、花嫁は嫁いだらもう二度と此処へは帰ってこれない、
そんな『無国籍』の状態にあったのだった。
妹を心配する姉役、H・アッバスがひたすら目を見張る演技。
心配ないから、大丈夫だから、、、と繰り返すお姉さんが
一番悲しそうに見えたのは私だけか。。
父や兄弟の問題も露呈されるが、ともあれテーマは結婚式。
この花嫁がアチラ側へ嫁げなければ、また果てしない手続き
(すごく待たされるらしい)の嵐が待ち受けており、家族は
何が何でも今日中に嫁がせたい!(爆)
当人には大変申し訳ないが、なんなんだ…?と思うほどの
手際の悪さ。間に入った赤十字のお姉さんも境界線を越えて
行ったり来たり…。どうしてめでたい結婚式ですら、そんな
イジワル(にしか見えない)をするんだろうかと恨めしくなる。
手続きが出来ず、何時間もその場で待たされる花嫁と一族。
そしてアチラでは花婿とその一族。
あー笑っちゃいけないシーンなのに、あまりに滑稽すぎる。
だって、こんな結婚式、観たことないのだ^^;
後半、ふと思った。ひょっとしたら。。
こうやって時間を引っ張って引っ張っていることで、花嫁は
家族との最後の時間を味わえているのだろうか。なんて。
だからラストで、もういいわ!!と云わんばかりにすっくと
立ちあがり、堂々とひとりで歩いていく姿に感動できる。
意を決し、他に関係なく、嫁いでいく娘の凛とした後姿。。
ふと振り返って家族を見る彼女の目がとてもキレイだった。
(ホントはこのくらいの決意で嫁がないといけないのよね^^;)