劇場公開日 2009年1月31日

「最終章を見ないと、この作品だけでは何とも1本の作品としては、中途半端でしょうね。」20世紀少年 第2章 最後の希望 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0最終章を見ないと、この作品だけでは何とも1本の作品としては、中途半端でしょうね。

2009年4月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 2作目は、3作目に続く橋渡し的な作品。ともだちが暗殺されるという衝撃的なラストはあるものの、1作目みたいな大がかりな山場がありません。
 物語は、2000年の"血の大みそか"から15年経っていました。
 姿を消したケンジの姪カンナは、ユキジの世話を受けながら成長し、高校生になっていたのです。いまや日本を支配するほどに勢力を増した教祖"ともだち"の正体を探るため、カンナはクラスメートの小泉と共に洗脳施設「ともだちランド」へ向かうという話が軸になっていました。
 主人公は、カンナになったものの、どうも超能力があるらしいと言う前振りめいたところしかなく、本格的な世を救っていく活躍は自作にお預けのようです。

 肝心な“ともだち”は誰かということは、カンナは少年時代の本人にバーチャルな世界で遭遇し、素顔を見ています。オロチョも本人とのやりとりで誰だか気づきます。しかし映像では、あと一息というところで“ともだち”の正体をオブラートに包みました。
 これも次回のネタばれになりそうです。

 2作目は、刑務所を脱獄したオロチョの活躍がかっこ良かったです。トヨエツが渋く決めまくります。堤監督の演出の良さは、役柄が持っている個性を自然にうまく引き出していることです。見ていてどんな人物なのか正格までよく分かるところが上手いなぁと思います。トヨエツのショーグンらしさが際立っていましたね。

 演出はいいのですが、ストーリーが・・・。
 全体にスピード感にこだわったストーリー構成なのだそうですが、はっきり言って登場人物も多く、この人なんで出ているのか掴めないままに、どんどんストーリーが進んでいきます。2作目も前作同様、原作読んでないと訳分かんないシーンが多々ありました。

 ところで見ていて、この作品は宗教への偏見を助長させる内容だとつくづく感じました。そもそもこの映画のアイデアはオウム事件の直後に生まれたそうなのです。
 ともだち教団の信者のカルト的仕草と、信者にするための洗脳システム。“絶交”と言う名の処刑など、研修に行ったら絶対戻れない「ともだちランド」という遊園地のような施設の存在。そしてサリン事件を彷彿させる毒物の噴霧などなにから何までオウム事件に酷似しています。
 いったい20世紀少年という漫画や映画の目的は何だろうと思います。地獄のサタンが地上の人間に、宗教というものは人を洗脳し破滅させる恐いものだから信じるなささやきかけているような気がしてなりません。

 さてさて、“ともだち”が暗殺によって死んでしまっては、最終章に繋がりません。そして復活を成し遂げれば、“ともだち”は神として崇められることでしょう。預言の書では、救世主は復活し、そのことで世界は滅亡に向かうとされています。
 “ともだち”が描く世界支配の野望の深謀遠慮については、ぜひ劇場でご覧ください。 それにしてもそこまでしてよげんの書の実現にこだわる“ともだち”の理由は、第2章でも明かされませんでした。

 なお、ラスト恒例の次回への予告映像では、なんとケンジらしい人物が登場しています。ということで最終章を見ないと、この作品だけでは何とも1本の作品としては、中途半端でしょうね。

流山の小地蔵