「他人を貶めたつもりが自分を一番貶めている」ブッシュ あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
他人を貶めたつもりが自分を一番貶めている
2008年アメリカ映画。130分。今年28本目の作品。オリバー・ストーン監督が第43代大統領ジョージ・W・ブッシュ氏を描いた作品。2008年ということはまだ現職だったということです。
内容は;
1,名門ブッシュ家の長男ジョージは素行の悪さで親を悲しませてきた。
2,しかし彼は第43代アメリカ大統領になり、ブッシュ家代々の「宿敵」フセイン大統領を打倒するために戦争をしかける。
3,その過程を見守っていた父親だが、心の中では憂いていた。
現職大統領(退任間近だったが)を批判した点では、チャップリンの「独裁者」のようです。そして「独裁者」同様に批判対象となる一国のリーダーをマンガ的に描いています。
本作で特にスポットが当てられているのはイラク戦争後のブッシュ政権の後始末の悪さなのですが、これに関して本作の製作陣はどこまで情報を手に入れてたのかは知る由もない。
しかし、本作で描かれる世界が100%本当だったとしても、ブッシュ氏の描き方が茶化しすぎのような気がしました。というか、茶化すことが目的で本作を作ったのではと思ってしまうほど酷い描き方です。高潔な魂の人というオリバー・ストーン監督のイメージも、これでは台無し。
イラク戦争の正当性?
それと個人の尊厳を天秤にかけたら、本作はイラク戦争批判が重かったということなのかもしれません。しかし本当にこれでいいのだろうか?何か間違っている気がする。
本作の鑑賞中、ずっとそんな疑問が頭を駆け巡っていて集中することが出来ませんでした。
こういった作品にGOサインが出せた風潮があったと想像すると、この題材のエサに安易に食いつきすぎたのではという感想がぬぐえません。まさしく本末転倒です。
ガラスの向こうにあったうってつけのブッシュ氏の姿は、実は自分の姿だった。そんな作品でした。