「美しいベイルート、美しい人々」キャラメル redirさんの映画レビュー(感想・評価)
美しいベイルート、美しい人々
毎度のことながらベイルートの洗練された生活ぶりが伺える、というだけでも素晴らしい。2007年のベイルート、
そこに暮らす人々は相変わらずとても洒落ていて、その中でも美を探求する女性たちが集まる美容室が舞台。
男性陣もみなかっこよくて、キリスト教の暮らし方、イスラム教の暮らし方、みんな仲良く混じって暮らしてるけど家の中ではなかなか大変そう。
あまり中東問題ということは意識せず知識もなくても楽しめるフェミニズムの、人権の、自由な生き方を模索する作品。中年になり更年期や閉経、肌や肉体の老化に戸惑いながらオーディションを受ける女性、報われない不倫に苦悩する、そして新しい恋を手にする女性、もちろん家族からは早く結婚をしろと言われている、ショートヘアにいつもジーンズを履いて同性愛者である子はお店に来た黒髪の美しい女性と眼差しをかわし、黒髪の女性は髪は切れない周りが驚くと最初は踏み出せないが最後はさっぱり切って自分の勇気新しい人生部への一歩に歓喜する、結婚を控えモスリムでは婚前交渉がNGで婚約者もそのことを知らないから特別な手術を受けに行く、そもそも夜自分の車で婚約者と話をしているだけで警察に尋問され、未婚の女性はダブルやツインのホテルの部屋も既婚の身分証明書がないため予約できない。仕立て屋の老齢の女性と認知症の姉と出会いすれ違う外国人(アメリカ人?)の男性。老齢同士の介護の問題、高齢者の恋愛など
レバノン、ベイルートでなくても世界で溢れかえるような女性に関する問題の数々。
そんな中で、それぞれが自分らしくささやかなところから解放を求め自分の権利だと気づいて、助け合いながらユーモアと慈愛をもちワイワイ楽しく泣いたリ笑ったりする、すごいスピード感、どんどん画面とシチュエーションが変わる、目が回るような回転で、この美容室の人々の高速会話みたいにたたみかける速度がすごい!!
初めて黒髪女性が美容院にきて、リマがシャンプーしている時に目があい、リマが恥ずかしそうな戸惑いと喜びをあらわすその二人のシーンにグッときて泣けた。イスラムだクリスチャンだ既婚だ未婚だ若い老けてるなんて話より、やはりさらに少数派の同性愛者の複雑で孤独な生きづらさを短い界隈と眼差しの交差でよく表現していると思い、泣けた。
繰り返しだけど、ベイルート、美しい女性美しい男性美しい街。