劇場公開日 2018年8月4日

「作品中の劇は、観念優先の抽象絵画のよう」懺悔 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0作品中の劇は、観念優先の抽象絵画のよう

2013年3月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合:60点
ストーリー: 65
キャスト: 70
演出: 55
ビジュアル: 70
音楽: 65

 ちょび髭の市長が死んだ。だが女性がたった一人で大量の土を掘り返し、自分よりもずっと重い市長を自在に運びだす。市長は市民一人一人に直接会って、時には部下を引き連れ家を訪ねて白々しい演技をし歌まで披露する。現実にはあまりなさそうなことである。そしてわざわざ中世の甲冑を着た警察が踏み込む。度々突然登場する映画の中の寸劇。そこでは現実とは異なる観念的な劇が上演され、実に馬鹿げた理由で罪と証拠をねつ造されていることに対する批判なんかが展開される。人々の苦難や人権弾圧や密告や恐怖政治などを、いくつもの大袈裟な劇を通して描き、それを繋ぎ合せて物語を構成している。
 それらの劇は、現実を描写するというよりも、出来事や考えを間接的に表そうとした観念的な抽象絵画のようであった。だがそれがゆえに観念的な印象しか受けなかったのも正直なところ。映画としてみれば、作品の中にいくつもの劇を上演するよりも、映画自体を一つの劇として描いてくれたほうが直接的でわかりやすいだろうし、あまりこの手法は私の好みではなかった。ただこの時代にソ連という場所でこれだけ体制批判的映画を作ったというのはとても勇気のあることであり、そこは評価できる。

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Cape God