劇場公開日 2024年1月26日

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「ジョニー・トー監督のアクションへの情熱が、観客にも強く伝わってくる一作」エグザイル 絆 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 ジョニー・トー監督のアクションへの情熱が、観客にも強く伝わってくる一作

2025年8月24日
PCから投稿

香港映画界を代表する人物の一人であるジョニー・トー監督。あくまで香港映画として独自のアクションを追求し続けてきた彼の姿勢が、率直に現れているのが本作です。

物語は明らかに、セルジオ・レオーネやサム・ペキンパーといった西部劇を意識させる造りになっています。特にブレイズ(アンソニー・ウォン)らが横並びになって歩く姿は、「『ワイルド・バンチ』(1969)!?」と空見するほど。

本作の見どころは何といっても派手なガンアクションですが、特に敵味方が上下の位置関係に分かれた銃撃戦がたびたび登場する点が印象に残ります。本作においてトー監督は、銃の乱射だけでなく、まるで剣豪同士の対決のように一回の射撃に重みがある戦いを描きたかった、ということですが、その意図は緊迫感とともに観客に十分伝わってきます。

アクション場面だけでなく作品全体に、見上げる、あるいは見下ろす、といった構図をちりばめることで、観客にもそれとなく垂直構造を意識させる、という繊細な作劇も印象的です。

カンヌ映画祭の出品作品でもある、『エレクション 黒社会』(2005)の次の監督作なのに、映像の色調が不自然だったり、フォーカスが甘かったり、主人公たちが彷徨する場面が唐突だったりと、予算やスケジュールの都合なのか少々作り込みの甘いところがないこともないけど、それでも映画としての面白さは十二分に保っている一作です。

本作に込めたトー監督のアクションに対する意欲と創意工夫については、ドキュメンタリー映画『映画監督ジョニー・トー 香港ノワールに生きて』(2013)という作品で詳しく描いているので、本作に興味を持った人はこちらも、ぜひ!

yui
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