「アジア版カサブランカと称するべきか…」シャンハイ 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
アジア版カサブランカと称するべきか…
二等兵の生き様を泥臭く描いた『一枚のハガキ』が記憶に新しいだけに、サスペンスタッチで、全く異質の角度で進む戦争映画は感慨深かった。
敵国の侵略が進み、身動きが取れない地域で、各国の思惑が飛び交う中、命懸けの探り合いを繰り広げ、騙し討ちを仕掛けるシチュエーションは、往年の名作『カサブランカ』に近い。
皮肉混じりの掛け合いや淡いラブロマンスも織り交ぜているので、アジア版『カサブランカ』とでも呼ぶべきであろうか。
ただ、主役の諜報部員を演じたジョン・キューザックにダンディズムも影の魅力も微塵も感じなかったのはイタい。
一瞬、デーブ・スペクターかと思った。
むしろ、敵方の渡辺謙大佐やチョウ・ユンファ親分の方が苦味走るぐらいオーラ全開だったので、完全に存在感を喰われてしまっている。
私情に政情、そして、慕情が忙しなく疑惑の渦に混合されていくため、展開を追うのがやっとで、『カサブランカ』のような胸に響く哀愁は一切なく、観終わった後、何も残らない。
結局、目撃者の菊地凛子は何やったんやろ?
んまぁ、ストーリーより各国代表の演技合戦に重点を置けば、そこそこ楽しいかな。
特に、主人公を翻弄する香港マフィアのマダムを妖艶に演じたコン・リーの美貌は冴え渡っていて、虜にする。
本当の主役は間違いなく彼女だ。
ボギー曰わく
「君の瞳に完敗」ってなもんである。
では、最後に短歌を一首
『燃ゆる賭場 仁義賭け引き 博徒の眼 嵐の一手は 愛に背いて』
by全竜
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