「鏡の恐怖と対決する終盤は、ホラーに近くなって、割とあっさり終わってしまけれど、絶対予想不可能なエンディングの意外性を支持したい。ここだけで見るべき価値有り。」ミラーズ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
鏡の恐怖と対決する終盤は、ホラーに近くなって、割とあっさり終わってしまけれど、絶対予想不可能なエンディングの意外性を支持したい。ここだけで見るべき価値有り。
『24』のファンにとって、シーズン7の放送を首を長ーくして待ち続ける日々を過ごしているはず。そんなファンの方には、キーファー主演作というのは嬉しいプレゼントになるのではないでしょうか。
主人公のニューヨーク市警刑事だったベンは、同僚を誤射して停職中の身。家族とも別居して、アルコールに浸る日々を過ごしていました。『24』で言えばseason3のバウアーに状況が似ているのですね。
とりあえず仕事をした方がいいと勧められて知人のツテで就いたのが夜警の仕事でした。ところが警備する場所と言えば、5年前に大火災で大勢の犠牲者を出したメイフラワーデパートの焼け跡だったのです。
ベンはそんな過去にとらわれず元はデパートの華やかだった売り場だったあとを淡々とパトロールしていきます。
暗闇に浮かぶ巨大な廃墟と化した空間、それだけでも薄気味悪いのに、焼けただれた館内に唯一煌びやかに輝く、巨大な鏡の存在は一際不気味さを感じずにはいられませんでした。
ベンが鏡に近づくとズドンという衝撃音。キタ―と思ったら、ハトが鏡にぶつかっただけという肩すかしでした。それが怖く感じてしまうのは、冒頭で前任の警備員が、鏡に写るもう一人の自分に命じられるままに死んでしまうところを見せつけられていたからです。冒頭いきなりグロいシーン立ったので印象は強烈でした。
すっかり鏡の中に何かあるという暗示にかけられている観客は、ベンが鏡の前に立つだけで何か起こると思ってしまうのです。
けれども監督は、恐怖を出し惜しみして、少しずつベンに何か変だと気づかせていきます。
鏡に写る焼けただれた女性の姿、そしてどんなに鏡に銃を撃っても壊れない、コレは何かあるぞとベンが鏡に恐怖心抱くところから、一気に恐怖は加速していきます。
それは焼け跡の鏡だけの恐怖だけできなかったのです。
焼け跡の鏡という鏡に乗り移り、ベンの関係者にまで広がっていきます。
同居する妹が口が広がり裂けてしまうというえぐい変死をしたことを受けて、鏡の恐怖と対峙することを決意したベンは、刑事の職業カンでかつて病院だったデパートの過去と前任者が死んだ経緯をを洗い出すのです。
そこで浮かんできた『エシェカー』というキーワード意味を調べていくうちに、ひとりの少女と50年前に病院で起こった忌まわしい事実にたどり着きます。
この調査の方法が強引で、バウアーを彷彿させるものでした。ただ、キーワードの解釈については、かなりご都合よすぎというところはあります。
スリラーで謎解きの要素を入れるのは、下手をすると張り詰めた恐怖感が途切れて謎解きにフォーカスしてしまいがちです。その点はうまくバランスされています。
謎解きと同時に進行するのは、ベンの家族の恐怖。
鏡の恐怖は、ベンの家族にも魔の手を伸ばしていました。ここでの監督のアイディアが面白いのです。何と鏡だけでなく、反射して映し出すものならすべてが恐怖の対象となっていたのです。
鏡の恐怖は、ベンの家族の家を水浸しにして、全室鏡状態に。水面に映し出されるベンの息子の無邪気な姿にかえって恐怖心を煽られました。
本作は、えぐいシーン少なめに、状況だけでスリル感を演出していくところは優れています。
そして別居中の家族が恐怖心をベンと共有するところがポイント。心の病気のせいだと決めつけてきた妻は、やっと夫の語ることが真実だとわかり、家族を守ろうと必至に戦う夫の姿に信頼を取り戻していくのです。
ベンが鏡に向き合うところで、自分を取り戻して、家族を再生していくストーリーでもあったのでした。
さて、鏡の恐怖と対決する終盤は、ホラーに近くなって、割とあっさり終わってしまいます。問題はエンディング。これは意外でしたね。面白い着想をする監督でした。
【ヒント】
一息ついたあと、えっナニ、何で世の中が逆さまになっているんだという事態がベンを待ち受けていたのです。だから原題が『Mirrors-Srorrim』なんですね。
これを見るとき、きっと鏡を見るとき不思議な感覚に襲われますよ。