「日本だけの問題じゃないんだね」BOY A septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
日本だけの問題じゃないんだね
~映画を見た人は、まだ見ていない人に彼の過去を話さないでください~
リーフレットに書かれた脚本家からのメッセージ。
鑑賞後、劇場に張ってあった各種関連記事を読みました。
脚本家の着想“日本であった、ある事件に衝撃を受け書きました”。
事件の具体名は触れられておりませんでしたが、おそらく神戸の事件でしょう。
この記事を読むまでは、イギリスで起きた駅から少年が
幼女を連れ去った事件から、着想を得ているのかとばかり思っていました。
ストーリーを、一言で表するなら“重い”。“実に重い”。
初主役アンドリュー・ガーフィールドの素晴らしさに
論評を集中させている感想が主でしたが、そうしなければ
重々しくなってしまうので、あえて避けたとしか思えません。
映画を見るときは、たいてい、
共感をしつつも、どこかに客観的な自分がいるのですが、
今作については、スクリーンで演ずる役者たちの行動を見ながら、
「果たして、私なら、このような場合、どのような行動をとるだろうか」
主役ではなく、主役を取り巻く周囲の人と同化をしてしまいました。
そのため、劇場に張ってあった論評記事とは視点が異なっていました
(論評は主役目線か、先に記した主人公の演技の素晴らしさがメイン。
サブで、加害者目線が欠けている、との批判記事もありました)。
取り巻く周囲の人々を見ながら考えていたこと。
もしも、今、目の前にいる若者が、
爽やかで、人間的にも素敵で、信頼のおける人物だったとして、
実は、過去に、上に記した過ちを犯していた人物だとしたら、受け入れられるか。
・・・・・恐らくわたしも、作品内の周囲の人と同じ行動を取っただろうと・・・・・。
それは、単純に彼が犯した過去の過ちが許せないだけではなく、
それを、許してしまう自分自身も許せない、二重の縛りに責められるから。
「 今だけを、見てあげればいいじゃない。今は、変わったんだから 」
似たようなセリフが繰り返し語られる。
しかし、ことはそんなに単純なものなのだろうか。
いくら昔のこととはいえ、またなにかの拍子に再発することだって、十二分にありえる。
「 たしかに彼は昔、罪を犯した。でも、彼も苦しんだんだ。わかってやってほしい 」
じつに、模範的な意見だ。
でも、忘れないでほしい。被害者は、それ以上に苦しんだ事実を。
あなたは、生・き・て・い・る。被害者は、生・き・て・い・な・い。
そう考えると、やはりわたしは許せないだろう。
赦してやりたい、その気持ちはゼロではないが、
今までどおりに、つきあうことはできないだろう。
救いのないラストが待っているが、
あれは、彼にとって、最善の救いではなかったかと思う。
最後に、主役の演技のすばらしさについても少しだけ。
あの、ロバート・レッドフォードが凄い、と唸ったそうです(笑顔)。
★彡 ★彡
最近は、邦画に偏りがちでしたが、
こういう作品を見せつけられると、
洋画も見なくては、との気にさせられます。
そして、また観たい映画が増えて・・・
「全部、観れないよ~~」と嘆き悲しむ(苦笑)。
それくらいの思いを突きつけられる、まさに“衝撃作”でした。
◆ ◆
【 補記 】
個人的には、
是非、学校の授業の題材として選んでいただきたいです。
同世代の若者たちが、どのような意見を述べるのか、非常に興味があります。