劇場公開日 2010年12月11日

「救済と呪いは紙一重」ノルウェイの森 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5救済と呪いは紙一重

2010年12月25日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

今更のレビューだしネタバレも無いが、
これから観ようと考えてる人に対してハードルを上げるような
レビューになっちゃった気がするので読む方は御注意を。

まずは映倫に問い質してみたい。
この映画をPG-12に指定した方々は
マトモにこの映画を観たのだろうか?
お堅い人間の言い分かも知れないが、
この映画はPG-12ではなくPG-15指定くらいが妥当では。
映像にも台詞にも、非常に露骨な性的表現(←PG-12的な書き方)
が含まれている。
12歳以下なら理解出来ないとでも判断したのかしら?
ちなみに僕が観賞していた時には何故か5、6歳位のお子さん連れも
観賞していたが、開始30分程で慌てて劇場から出て行ってしまった。
家族で観るなら事前にもう少し映画の内容を吟味すべきとも思うが、
PG-12指定映画に“ああいう”表現が含まれるたぁ
フツーは思うまいて。

本編とあまり関係無い話をして申し訳無い。本題に入ります。

まず映像と音楽、そしてそれらのテンポ。これが非常に心地良い。
『セリフ棒読み』という意見があるのは尤もだが、僕はあの
淡々とした語り口と映像とが実にすんなり馴染んでいるように思えた。

目眩を覚えるような長回しや断片的な映像はどれも水面のように
艶やかで、繋ぎ合わせると何ともいえない浮遊感がある。
プールの底に沈んでただじっと耳を澄ます時に感じる、
あの非現実的な快い感覚——ピンと来てくれる方が居るか分からないが、
あれに近いものを感じる。
60、70年代という僕の知らない時代の空気も、
その感覚を助長しているのかも知れない。

しかし見た目から受ける印象よりも物語は遥かに重い。
恋人と観に行こうと考えている方がもし居れば、
軽い気持ちでは観に行かない方が良い。
この映画で語られるのは、愛する事で得られる救いや喜び以外の側面だからだ。

「私がこの世に存在した事を忘れないでいてほしいの」

ヒロインが終盤で放つ台詞が、この映画の深刻な面を最も良く表していると僕は思う。
一生かけて引き摺らなければならない重い枷としての、愛。

ラストシーンで僕が感じた事——

愛はこの世を確実に生き辛い場所に変えるが、
愛が無くては我々は生きる事もままならない。

……なんか映画『シャイニング』の幽霊バーテンみたいな台詞を
吐いてしまったが、つまりはそういう事を言いたいのではと感じた次第。

<2010/12/11観賞>

浮遊きびなご