「正義の偶像(ヒーロー)、偽りの虚像(平和)」ウォッチメン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
正義の偶像(ヒーロー)、偽りの虚像(平和)
まだDCフィルム・ユニバースが始まる前、2009年にザック・スナイダーが同名グラフィックノベルを基に手掛けたコミック・ヒーロー映画。
アメリカ近代史の数々の出来事や事件。その陰には、ヒーローたちの存在があった…。
第二次大戦前に結集した初代“ミニッツメン”。
時が流れ、ヒーローたちが入れ替わり、80年代名を轟かすは、“ウォッチメン”。
コメディアン、ロールシャッハ、Dr.マンハッタン、ナイトオウルⅡ世、シルク・スペクターⅡ、オジマンディアス…。
既存のヒーローを彷彿させたり、見た目も個性もインパクト大。
力を合わせ、巨悪と戦う!
…なんて話では断じて無い!
後にスナイダーが手掛けるDCユニバースの原点を見て取れるほど、ダークで重苦しい。
そもそも、彼らを“ヒーロー”と呼んでいいべきか。
コメディアンは民間人にも銃口を向ける。
マスクの染み(?)が不気味に動くロールシャッハはダークヒーローと言うより、ヴィランにしか見えない。(でも、個人的にウォッチメンの中で一番好きなのはロールシャッハ)
誰よりも強烈インパクトのDr.マンハッタンは神の如き力と存在で、その誕生は悲劇。
各々何かしら重荷や闇を抱え、関係も複雑。
でも、これがヒーローのリアルかもしれない。
普通の人とかけ離れた能力を持った悩める内面の者たちの集団。
アベンジャーズは理想的なファンタジーに過ぎない。(“ヒーロー映画”としとは最高だけど)
話は…
何者かに殺されたコメディアン。
世界では核戦争の緊張高まる。
そこには、恐るべき陰謀が…。
とにかくエピソードが多く、散漫し、巧く纏まっているとは言い難い。
各ヒーローたちも充分に見せ場が儲けられているとは言えず、どうしてもロールシャッハとDr.マンハッタンしか印象が残らない。(Dr.マンハッタンなんて彼一人で単独映画が作れる)
ヒーロー映画としては面白味に欠けるが、訴えるものはなかなかズシンと響く。
陰謀の黒幕は、仲間の一人。
だが、決して悪の道に堕ちたとか、そんな理由じゃない。
彼には彼なりの、正義や平和の考えや行動。
一人は真っ向から反対する。どんな時でも正義は貫くべきだ、と。
どちらの言い分にも是非はある。
仲間内でも天秤に架けたように揺れ動く。
彼らが取ったのは…
この“平和”を守る。
確かに真っ当ではない。
“正義”という矜持を失うのも厭わない“平和”の妥当。
犠牲を出してでも。
真実に蓋をし、まるで神か何かのように世界を守り、平和を固持する。
彼らは、ヒーローか。
ならば、ヒーローとは何だ? その存在の意味は?
ロールシャッハ記にはこう記されるだろう。
“20XX年。X月X日。
今日も偶像(ヒーロー)が虚像(平和)を守った”