「結局はアメリカご都合主義の映画」ハート・ロッカー モリさんの映画レビュー(感想・評価)
結局はアメリカご都合主義の映画
昨年のアカデミー賞で『アバター』と熾烈な賞争いを繰り広げ、見事、作品賞と他6部門を獲得。監督はその『アバター』や『タイタニック』のジェームズ・キャメロンの元妻であるキャスリン・ビグロー。彼女は本作で女性初の監督賞を受賞した。
2004年夏のイラクのバグダッド。これまで870以上の爆発物を処理してきたジェームズ(ジェレミー・レナー)がチームの新リーダーとして赴任してくる。彼は死を恐れぬ態度で周囲を戸惑わせ、まるでギャンブルのように爆発物の解体を次々と処理していく。いわゆる「戦争中毒」の男の精神像を丹念に描写している。
2003年のアメリカによるイラク侵攻以降、関連の作品が次々と作られた。だが、どれも興行収入は著しくない。どうやら、アメリカ人がこういった作品を敬遠しているようだ。本作がアカデミー賞を獲得した背景には、イラク戦争の賛否をはっきりと明言せず、ただ単に、いまだ治安の回復しかいこの地で黙々と戦争処理に当たる兵士たちの描写を黙々と描いているからだろう。
だが、それが何だって言うんだ。イラク侵攻の理由とした大量破壊兵器も結局は見つからず、依然、誤爆によりイラク市民の犠牲も後をたたない。こういった背景をばっさり切り捨てる描写に、はっきり言って違和感が残った。結局はアメリカのご都合主義の映画になってしまったようだ。
コメントする