「人がヒトたる所以がそこにはある」宮廷画家ゴヤは見た カサキショーさんの映画レビュー(感想・評価)
人がヒトたる所以がそこにはある
この作品は
ゴヤという歴史上実際にいたスペインの偉大な画家が、
18世紀後半から19世紀初頭にかけて自分の目にした事を
ある一組の男女の運命を通して描いた作品です。
時は18世紀後半、世の中の秩序を守ろうと
教会は異端の取締りを強化する。
滑稽な事に、男が立ちションするとき廻りの人に見られないように
こそこそするのは割礼のせいで、異教徒だからだ、とか
難くせをつけながら憲兵隊のような者たちを市中に見回らせる。
そのせいで、美少女のイネス(ナタリー)は、
居酒屋で豚肉を食べなかったばかりに、
異端者扱いされ、拷問のすえ、ありもしない告白をさせられてしまう。
このシーン、全裸姿のイネスの演技が凄ざましい。
対する、協会側の先導者となったロレンソ神父(ハビエル)は
取締り強化を主張しておきながら、都合が悪くなると、
国内へ逃亡し、ナポレオン軍とともにスペインへ凱旋してくる。
その後、スペイン国内は戦火となり、正義とは何かを
見失ってします。
そんな混乱をゴヤの目を通して描いているのです。
今の世の中も、アメリカ同時多発テロ以来の戦争が続き、
何のための戦争なのか、何が正義なのか不透明な世の中です。
そんなことを、この映画を通して訴えたかったのでしょうか。
私にはそのように思えてなりません。
同じ事を何度も何度も繰り返す、人間の愚かさよ!
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