劇場公開日 2008年12月13日

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「誰かこの作品に救いの翼を。」空へ 救いの翼 RESCUE WINGS いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5誰かこの作品に救いの翼を。

2008年11月28日

寝られる



 高山侑子、航空自衛隊のプロモーション映画
 にもなってね~よ。

 航空救難団に母を救われた過去を持つ川島遥風(高山侑子)は
 航空救難団に憧れ、
 女性としては初の救難ヘリUH-60の新人パイロットとなることが出来た。
 しかし、彼女に待ち受けていたのは、荒れ狂う海で、突風渦巻く断崖で、
 強風吹きすさぶ離島で、過酷な訓練と数々の任務。
 到底感傷を捨てなければ全うすることが出来ない人名救出の任務。
 彼女は、葛藤しながらも救えないことの辛さも乗り越えていき、
 救難ヘリ操縦士としての覚悟と誇り精神を育んでいく。
 そんなある日、戦闘機が突然レーダーから消えたとの連絡が入る。
 遭難したパイロットの救出に向かった遥風は、
 残された燃料のリミットと闘いながら、
 命がけのミッションに突き進んでいく。

 舞台挨拶で登壇した高山侑子は、
 目が必要以上にキラキラしていて可愛かった。
 作品中でもそれなりに目に力は感じられた。

 ヘリや戦闘機が飛行するシーンは
 結構いい画が撮れているじゃないですか、
 というシーンもあった。

 しかし、大きな声で言いたい。
 この作品の出来は人間ドラマとしても、エンターテイメントとしても、
 相当、ヒドイ。
 今年公開作品で観た中ではワーストかもしれない。
 よく寝なかったなと思うし、それは寝てられない、
 こういう作品こそちゃんと観て、書かなきゃと思ったのかも。

 初の映画で主演の大型新人と
 高山侑子を所属事務所のスターダストとしては
 大げさにアピールしたいんだろうけど、
 父親は航空自衛隊新潟救難隊の救難員で、
 事故に遭い殉職してしまい、
 殉職隊員追悼式に出席するため上京した時に、
 スカウトされたという高山侑子には運命的な役なのかもしれないけど、
 それじゃ、自衛隊も協力しないわけにはいかないだろうし、
 事務所としては無理やりその事実を作品に利用したように思える。
 けれども、頑張っていたとは思うけど、
 演技は素晴らしいとは言えなかったかな。

 冒頭のシーンで端役の人の下手さにイキナリ萎えちゃったんで、
 演技は期待出来ないんだろうなと思ってはいたが、
 三浦友和や木村佳乃や金子賢がそれなりに存在感を見せる一方で、
 鈴木聖奈や瀬戸早妃はちょっとヒドかったし、
 渡辺大は自衛隊というよりも軍人さんという感じで、
 父親の渡辺謙を意識しすぎなんじゃないでしょうか。
 井坂俊哉もイマイチだったな。
 中村雅俊も少しの出演時間をしっかりと引き締めてくれなかったな。
 撮影時は15歳で役の年齢を考えると、
 それなりに見えるので高山侑子は相当頑張ってると思えなくもないけど、
 腹から声が出てないし、
 作品を大きく見るとなんだか役者は総崩れと言わないまでも、
 だから高山侑子も少しはマトモに見えた部分もあるのかもしれない。

 主人公の新人としての成長物語は、失敗や助けられなかった命、
 助けられたと思った命が、などを乗り越えて、
 物語として着地するといよりも、全ての出来事が点、点、点、
 としてしか思えず、繋がってるように思えず、
 作品中の人物の感情も伝わってこず、
 当然こちらの感情も1ミリも動きはしない。
 あるはずべきというか、あった方がいいというシーンが
 結構なボリュームでないのも気になる。
 サブストーリーの同僚たちの物語もそれは同じで、失敗で、
 自分のせいだと思って、落ち込んだ、でも、これで立ち直った。
 点、点、点、ですわ。
 あのこちらが恥ずかしくなってしまうような演出はなんだ。
 あのヒドイ合成はなんだ。あのイキナリの発表はなんだ。
 意味の分からない、自衛隊でも恋愛できますよ的なお話はなんだ。

 ヒドイと思ったのは音楽もそうで、
 イチイチ一昔前の連ドラのような音楽が流れて苦笑いしてしまう。
 その音楽で三浦友和が演技してると、モロじゃないですか。
 これは大映ドラマですか?知らんけど。

 そしてヒドイ映像。
 先に褒めておいてなんですけど、よかったのはほんの少しなんですよ。
 金の掛かりそうな映像は爆発シーンなどがことごとくヒドイ。
 嵐で座礁した漁船の救助シーン。
 高波が襲う漁船の映像。ヘリ越しに見える海の映像。
 荒れ狂う海を大きく捉えた映像。
 おそらくセットと、実際に飛んでる映像と、CGの映像です。
 それがどう見ても同じ場所には見えないというヒドサったらない。
 もちろん嵐の中で命がけで実際に漁船を使って、ヘリを飛ばして、
 というそんなことは出来ないでしょうが、それにしてもヒドイ。
“海猿”よりも、それも連ドラの海猿よりもヒドイんじゃないのか?

 そして、クライマックス、
 というよりもエンターテイメント作品としてみると、
 全く盛り上がらないのでクライマックスの“ような”展開においては、
 そんなこと出来っこないので、
 別に実機をぶっ壊せとは言わないですけど、
 何?あの説明のなさは。どうしてなのか全く分からなかった。
 残骸ぐらいあってもいいだろうに。
 それから、諦めようとする展開からの、アプローチにいたる過程には、
 あの人が見かけていなかったら、諦めて助からなかったのかと、
 指令を出す方の描き方がヘボ過ぎやしませんかと、
 やっぱり縦割りなんですかと、思ってしまって、
 自衛隊も怒るんじゃないでしょうか。

 監督は舞台挨拶で航空自衛隊の日常を描いただけだと言っていた。
 それにしても、人間ドラマもクライマックスも盛り上がらず、
 自衛隊の方たちも招待されていたのですが、
 本気で感想を聞こうかと思っちゃったよ。

 それから、戦闘機パイロットから救難ヘリに配置転換された人物の
「前は国家を背負っていたが、今は命を背負っている」
 というようなセリフには、カッコいいこと言ってるようだけど、
 戦闘機に乗っていても、国家も命も背負っているんじゃないのか。
 救難ヘリに乗っていても、命も国家も背負っているんじゃないのか。
 というツッコミを入れたくてしょうがなかった。

 今年何本か酷評しちゃった作品があったけど、
 この作品を観た後で思い返すと、十分面白かったよな、と思ってしまう。

 ヘリが飛ぶだけで、戦闘機が飛ぶだけで、
 たまんねぇ~という人には少しはいいんじゃない。

いきいき