「武骨な演出で浮き彫りとなる、デリンジャーの“機能美”」パブリック・エネミーズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
武骨な演出で浮き彫りとなる、デリンジャーの“機能美”
リドリー・スコット監督は銃が好きだと何かの雑誌で読んだ覚えがある。確かこんな事を語っていた筈だ。
「銃は存在自体が機能だ。一切の無駄が無く、そこが美しい」
機能美。
まさしく本作だ。
伝説の銀行強盗デリンジャーを描いた本作には一切の無駄がなく、武骨でありながら身震いするほどエレガント。
主人公逹は皆、己の目的を明確に理解している。行動と目的が完璧に一致していて、無駄口は叩かない。口を開けば、研ぎ澄まされた台詞の数々だ。
「人は来た道ばかり気にするが、どこに向かうかこそ大切だ」
「お前は今まで誰も見捨てなかった。だが今度はよせ」
「奴はシャーリー・テンプルなど観ない」
そしてラスト、あの極上の台詞。
この映画に社会的テーマなど無い。デリンジャーという魅力的な男をスクリーン上に実在させる——それこそがマイケル・マン監督の目的だろう。
だから、過去は描かない。過去としても描かない。力強い構図と最低限の説明で、登場人物が躍動するその瞬間をスクリーンに叩きつける。
そのスタイルこそ、『今』に全てを求めたデリンジャーの生き様に相応しい。
シーンの繋がりや音楽がぶつ切りな点は気になるが、正直、傑作だと思う。
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