「主人公たちの負の面も描くことが、現実に迫っている」ディファイアンス Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公たちの負の面も描くことが、現実に迫っている
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総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
ユダヤ人の迫害という政治的・歴史的な主題をもった話というよりも、森の中に逃げ延びて生きることを試みた人々の人間劇。もちろん不条理に迫害されたユダヤ人のことも生き延びた人々の悲しみと怒りも描いているし、それはそれで大きな意味を持っている。
だがそれよりも、森に逃れた人々はどうやって生活をしていたのか、その生活はどのようなものだったのかの描き方により引き付けられた。食料の調達は近くの村から奪ってくるし、時々はドイツ軍を襲ってドイツ兵を残虐に殺すし、飢えと寒さとの戦いは最も厳しく、限られた資源を巡って内部での対立もある。彼らは生き延びただけの単なる犠牲者でも勇敢な英雄でもなく、彼ら自身もまた加害者である部分や弱さといった負の部分も含めてわからせてくれるし、森での避難生活の日々の様子の厳しさが興味深かった。生き残るためには綺麗ごとだけではすまないのだ、正義の行いだけで食べていけたのではないという描写が、当時の現実の姿を捉えようとしているように思えた。
ただそれだからこそ、食料を奪われていた付近の住民たちの描写は少ないのは気になる。そうじゃなくても戦時中で物資が無い時代に、食料を奪うという行為はどのようなものだったのか、もっと掘り下げてもいい。またウイキペディアによると、迫力のある唐突な最後の戦車との戦闘は映画の脚色にすぎず実際には無かったようで、やはり生き残るための厳しい生活の描写だけでは地味すぎて物語が盛り上がらせられなかったというのがあったのかと思う。
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