「心地良い中毒性」リミッツ・オブ・コントロール Chemyさんの映画レビュー(感想・評価)
心地良い中毒性
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ジャームッシュ作品には心地良い中毒性がある。見終わった瞬間はそうでもないが、数日後にジワジワと思い出し、無性にもう1度観たくなるのだ。本作は初めてアメリカを飛び出し、オールスペインロケ、そして主人公が殺し屋という、一見ジャームッシュらしからぬ顔をしている。しかし、“孤独な男”というコードネームを持つ殺し屋が、様々なメッセンジャーに会うべく、スペイン中を彷徨するロードムービーであること、ハードボイルドとはいえど、どこかオフビートな感覚、そして繰り返されるバリエーション。紛れもないジャームッシュの世界だ。殺人シーンはあるものの、大きなアクションは皆無。殺し屋はメッセンジャーをひたすら「待つ」。この静寂と孤独。そこに接触するメッセンジャーの非現実的なキャラクターが、何とも言いがたい「味」がある。繰り返されるセリフが複線となり、最後にピッチリパズルのはまる爽快感。任務を終えた殺し屋が日常に戻る瞬間、我々も日常に戻る。スタイリッシュな映像から引き戻される。その感覚が妙に心地良い・・・。
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