「運命の皮肉。」ジェイン・オースティン 秘められた恋 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
運命の皮肉。
名画座にて。
公開時に観られず、しかし早い段階で名画座に来ることを
キャッチし^^;楽しみに待っていた。
そしてこの作品、もっと早く観ていたなら当然ベスト10に
入れただろう…と思うくらい好きな作品になってしまった。
英国婦人のJ・オースティン好きは知っているけれど、
この役をA・ハサウェイが演じることに反発もあったそうだ。
どう見てもそうは見えないからだろうか^^;
ところが彼女、とてもいい演技で私達を惹きこんでくれた。
お相手のJ・マカヴォイ(私には永遠のタムナスさん)との
かけ合いも素晴らしく、機知に富んでいて観応えがあった。
親が決めた縁談にN0を掲げ、自分の気持ちに正直に生きる
女性像はかなり進歩的で、しかし経験不足を彼に指摘され、
すぐにムッとなるところなどは純粋で愛らしさに富んでいる。
反発しあう二人がどんどん惹かれ合っていく様子が楽しい。
どんなに頭脳明晰でも、金がなければただの貧乏人という
階級社会の真っ只中、貧しい牧師の家に生まれた彼女は
あれほどの文才があるにせよ、生活の足しにすらならない。
「貧乏」という言葉がこれでもかこれでもかと追い打ちをかけ、
彼らの恋愛の行く手を阻むのが観ていて本当に切なかった。
愛なんてものよりまずは現実を見よ。という周囲の呼掛けを
私にとっての現実は、愛なのよ!と切って返すような女性。
それでも家族の為に、悩んで泣いて悩んで…を繰り返した。
夢にみた愛ある結婚生活は、結局現実のものとはならず
彼女はたった42年の短い生涯を独身のまま終えるのだが、
あれほど進歩的で、がむしゃらで、真っすぐだった彼女が
(母親が言った結婚生活に対する酷い言葉の意味を理解し)
身を退いた場面で彼女は彼の幸せを選択したのだと思った。
彼が弁護士として独り立ちするためには、自分は必要ない。
私はこういう物語を観るといつも、美空ひばりの悲しい酒
「好きで添えない人の世を…」が頭に浮かんでしまうのだが、
今作を観ているときにも頭の中に流れていた^^;
だから酒に溺れてもいいという言い訳にはならないと思うが、
これが運命なんだと恰好よく締めくくる度量は自分にはない。
好きでもない人と結婚して子供を産むなんて絶対にゴメンだ。
戦国武将の奥方さま、ゴメンなさい。
歳をとって…彼らの締めくくりには涙が出た。
これが実話なら、J・オースティンは期待通りの人物だった。
(その選択は彼と彼女の成功に繋がった。これが本当の皮肉)