「なのにあなたはキエフへゆくの」この自由な世界で Kocmoc Kocmaさんの映画レビュー(感想・評価)
なのにあなたはキエフへゆくの
印象は「泣ける」「笑える」「悲しい」にしたが、そんなんじゃ実はないんだよね。「考えさせられる」というのがあってほしいな。
ポーランドのカトヴィエに始まり、ウクライナのキエフで終わるこの映画の中で、シングル・マザーのヒロインは逆境の中でもたくましく生き抜いていくのだが、そのやり方はちょっとやり過ぎ。
「罪」という言葉は、ロシア語では「踏み外す→一線を越えてしまう」みたいな成り立ちをしているが、このヒロインはまさにその一線を越えてしまうのだ。
自分(及び息子)が生きていくためにがむしゃらになり、いつしか「自分が負け犬にならないためには他人の犠牲は仕方ない」という感覚に陥ることによって。
それは違うよ、というまともな感性を持って諭してくれる人が彼女にはいる。父親・同僚・ポーランド人のボーイフレンド。
不法移民の密告のシーンで同僚が「そういうことまでする<自由>があると思っているのか?」と言うと、「たぶんない」と答える。(でもしてしまう、罪深さ!)
案外周囲の人には恵まれているし、踏みとどまり、引き返すチャンスは何度もあったのに、それでもあなたはキエフに来たのか。
学んでいないというか、学び過ぎてしまったというか。
今年前半に観た映画のベストは<南米のケン・ローチ>などと言われているニコラス・トゥオッツォの「今夜、列車は走る」だったけれど、本家もきっちり力作を取り続けていることがわかる。
あと、やっぱり草サッカーシーンがあってローチらしい。
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