敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生のレビュー・感想・評価
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二つのドキュメンタリー作品から見えてくるものは…
映画「ハンナ・アーレント」から
アドルフ・アイヒマンを知り、
その関連でドキュメンタリー映画
「スペシャリスト~自覚なき殺人者~」
を観ている中で、
更にクラウス・バルビーというナチス戦犯の
ドキュメンタリー映画があることを知った。
そして、この二人のナチス戦犯には幾つかの
共通点と相違点があったことを知った。
二人は元々、ユダヤ人に対する偏見は
有していなかったようなのだが、
全ては上からの命令だったとして
抗することが出来なかったとの
ユダヤ人虐殺行為の言い訳や、
二人ともに南米に逃げおおせて、
長く家族と共に生活をしていた
との点については共通していた。
しかし、
アイヒマンは潜伏はしていたものの
イスラエル特務機関によって、
一方、バルビーは政治的な欲から
自ら隙を作ってしまい、
共に捕らえられ裁判に至ったという点、
また、死刑制度が有るか無いかという
裁判地の違いからか、
アドルフ・アイヒマンは死刑に、
クラウス・バルビーは無期懲役と、
二人の運命は大きく異なった。
それにしても、バルビーの人生からは、
南米に逃げ押せたナチス戦犯の中には
時の米国やボリビアの軍事政権の思惑の中で
反共活動を繰り広げる勢力があったことや、
彼がゲバラ殺害に関与していたことも知り
大変驚かされた。
何れにしても、二つのドキュメンタリーから
得られることは、
戦争は加害者の非人間性を更に助長し、
そのことによる被害者の後遺症は
長くそして根深く続き、
戦争は絶対に避けなければならないもの
との改めての認識だった。
「人間」と「歴史」、その他もろもろについて
2007年フランス映画。90分。今年17本目の作品。本作の監督ケビン・マクドナルドの「運命を分けたザイル」では、雪山で遭難した二人の内の一人が、もう一人の命綱を文字通り切るという究極の友情が描かれていました(これは実話)。
そして、この本作で扱われる友情とは、「敵の敵は我が友」という世界です(これも実話)。
内容は:
1、ナチス将校クラウス・バルビーは、ユダヤ人の子供40人も虐殺したことのあるナチスきっての残酷非情な人間である。
2、終戦後、彼は戦犯として捕らわれるはずだったが、冷戦をにらんだ米国の意図で、ソ連を知り尽くしたバルビーをかくまうようになる。
3、ブラジルに亡命したバルビーは、政治家と隠密な関係を築き、政治結社を作る。
今は亡きバルビー氏がナチスの時代を生きたことについて一言、「人間は常になにかに従属していなければならない」という冒頭が印象的。そして戦争が終わって彼が選んだのは、罪の償いではなく、生き続けることだった。
生き続けるという選択は聞こえはいいですが、それは道理に反した選択肢のみが残されていたならば、それを自らの意志で選ぶということだってあります。そして、人はろくなことしか考えなくなることだってあると思います。
バルビー氏は結果的に悪行ばかりの人生でしたが、恐らく彼に足りなかったのは生きること以外に考えなければならないことを考えなかったことなのでしょう。時代を闊歩したように見えるバルビー氏は、それゆえに実は心の身動きが取れなくなってしまったのだと。
しかし、本作はバルビー氏に焦点をあてた上で「人間」と「歴史」などなどについて考察した作品だと思います。社会生活を送っていくにつれ七面倒くさくなるテーマこそ、実はじっくり考えることこそが大切なのだ。そう思いました。
それにしても、フランスがつくるドキュメンタリーってほんとリアリティがあります。
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