劇場公開日 2008年6月7日

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「静かで動かない映像の中で浮き彫りになる「死刑執行」による心の動き」休暇 ジョルジュ・トーニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0静かで動かない映像の中で浮き彫りになる「死刑執行」による心の動き

<ストーリー>
刑務官の平井は、離婚歴のある子持ちの美香との結婚を控えていた。彼女の息子の達哉はなかなか心を開いてくれないが、時間が必要であることはわかっている。仕事場である拘置所は、特別な緊張感もなくいつもと同じ時間が流れていた。唯一気になっているのは、死刑囚の金田。絵を書くことが好きな静かな男ではあるが、ちょっとつかみどころがない。

披露宴をまじかにしたある日、2日後に金田の刑が施行されることが言い渡される。処刑の際、下に落ちてきた体を支える「支え役」をすると、1週間の特別休暇が与えられることを知った平井は、有給休暇を使い果たしていたため、新婚旅行に充てるため、ためらいながらも志願する。

<個人的戯言>
とにかく静かな映画。

拘置所という場所、
更に子持ちの女性と結婚するというシチュエーションは、

ちょっと特別なのですが、日常はとても静かに、そして普通に流れていきます。それが刑執行が言い渡されてから、刑務官たちがバランスを崩し始め、作品全体がざわめき始めます。
そして「支え役」をしたことで、その「残像」に悩まされる主人公。そのことが彼の新しい家族への接し方にも変化をもたらします。
刑務官を演じる小林薫、そして死刑囚を演じる西島秀俊が、その心情の変化を大袈裟な感じではなく、非常に抑えた表現ながら、少しずつ沁みていくような変化を見事に体現しています。

そしてそのアプローチを更に際立たせるのが、長回しで台詞のないシーンの連続。そのある種苦痛なほど「動かない」シーンの間に、観ている方が居心地の悪さを感じることで、その場面にいる登場人物の気持ちを体感することになります。

ゆっくりした流れの中で、主要な登場人物の気持ちが非常に丁寧に描き出された作品。

ジョルジュ・トーニオ