「弾道が曲がるほど気合入ったアクション映画」ウォンテッド 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)
弾道が曲がるほど気合入ったアクション映画
バカな上司にいびられ、恋人は親友に寝取られ、ストレス満開の毎日を送りながら、その生活から逃げ出すことのできない主人公ウェスリー。
現代社会に生きる身として、同じような苦痛の毎日に生きている人は少なくないと思う。
そんな「オレたち」からすると、この作品はとっても共感に満ちたスタート。
ところがアンジェリーナ・ジョリー演じる謎の女フォックスが登場するあたりから、話は急展開。正体不明の連中に拉致され、預金残高が跳ね上がり、自分に関係すると知らされた事件がニュースに出ている等、退屈でストレスに満ちた人生から、生まれ変わったかのような気分を味わう。
しかし、これくらいでいい気になってもらったら困る。そんな「オレたち」の声が届いたのか、文字通り痛い思いをしていく。
なるほど、退屈な人生から卒業するのも楽じゃない。
そもそもウェスリーが学ぶ教師たちは、銃の弾道をカーブさせ、おったまげなカースタントをやらかす技術の持ち主。選ばれし者というだけでマネできるくらいなら、「"オレ"だって世の中変えてやるぜ」ということになってしまう。
昨今では教育現場の体罰はタブーになっているけど、ここの"学校"はそんなの通用しない。「根性叩き直してやるぜ」を文字通り実践する人、「弾丸詰まりも弾丸切れもない」とナイフの有用性を体験させる太っちょの屠殺人。などなど。
こんな教師に叩き込まれると、とっても見事な技術を体得できるようだ。
頭を抱えてうずくまった男をどう回収するか、パトカーで封鎖された道路をどう突破するか、対弾仕様の高級車に守られた標的をどう射撃するのか、あるいは走行中の列車にどう乗り移るのか。
その回答は本作の中にある。
カーアクションが大好きな人にとって、こんなにブッ飛んだシーンが満載された作品はそんなにないんじゃなかろうか。
また『ウォンテッド』の目玉の一つはカーブする弾道だが、文字にすると途端にダサくなる。レビュアー泣かせ。こればっかりは観てもらうしかない。
一つ言えるのは、物理法則を無視しているようで、本作世界における説得力は十分に持ち合わせているということ。
たとえるなら映画『リベリオン』におけるガン=カタに近い。レビュアーとしては、これで察してくださいと拝むしかない。
こういうマンガかアニメでやらかすアクションを多用するからだろうか、人間も程よくワープする。
あっちを見ていたら、こっちで美女が見つめている。
階下に侵入したアイツが屋上のコイツの背後に立っている。
アクション演出が派手である以上、リアリティを追求しようという努力は放棄してスタイリッシュに仕上げようというのがよく分かる。その上での演出だから、ちょっと奇妙だけど受け入れがたいレベルには至っていない。
スタイリッシュなのは映像だけではない。
本作に込められたメッセージは、誰しも直面する人生の課題。
それが運命づけられたとき、そしてそれが自分に降りかかってきたとき、どういう決断をするのか。
ウェスリーは、フォックスは?
見た目がイケてる映画だと鑑賞後が軽かったりするが、本作はそこまで軽くもない。
最悪でもアンジーのケツが拝めるので、ブーブー言わなくていいと思う。
では評価。
キャスティング:9(アンジェリーナ・ジョリーにモーガン・フリーマンと、脇の構えが豪華)
ストーリー:8(サクサク進むストーリー展開。ダサ男だったウェスリーの変化が見物)
映像・演出:10(弾道が曲がるというトンデモが、とっても美しい。カーアクションも派手かつスタイリッシュ)
リフレッシュ:8(ストレス満載の現代社会から解放される映像とストーリー)
ガン&カー:9(リアリティよりシネマティック。観てて爽快のアクション)
というわけで総合評価は50点満点中44点。
アクション好きな人にはとにかくオススメ。
現代社会のストレスに押しつぶされそうな人は、コレ観たら憂さ晴らしになること請け合い。