櫻の園 さくらのそののレビュー・感想・評価
全2件を表示
なぜかセルフリメイク
セルフリメイクといえば故市川崑監督の『ビルマの竪琴』や『犬神家の一族』を思い出してしまいますが、この中原俊監督の『櫻の園』は設定だけを再利用した大林宣彦監督の『転校生』のように全く違う作品になっています。もちろんオリジナルが高い評価を得たことが条件であるかのようで、これをこなせば巨匠の仲間入りというステータスがあるのかもしれません・・・もしかすると『エヴァ』なんてのもそうなのかも・・・
吉田秋生の原作は知らないけど、オリジナル劇場版では劇中劇を巧みに散りばめ、演劇開演直前の2時間をほぼオンタイムで展開する独創性が素晴らしい出来でした。時折、劇中劇の台詞がそのまま登場人物たちの心情を表してるかのような演出があったり、同時進行する別の場所の女子高生たちの行動が繊細に描かれていることに緊迫感さえあったように覚えています。
ところが・・・なぜリメイクしたんでしょう?と疑ってしまいたくなる展開。バイオリンの道をさっさと諦め母と姉も卒業生である櫻華学園高等学校へ編入してきた主人公の桃(福田沙紀)。行き当たりばったりで11年前から封印されていた演劇部恒例の“櫻の園”を復活させることになる。しかし、今は廃部となっていたが、かつての演劇部員だった担任の先生(菊川怜)や教頭(富司純子)から猛反対。劇を演ずることさえ禁止だという、まるで野球を禁止される難局ばかりの「ROOKIES」のようで、本題にすらなかなか入れない・・・
何が問題かというと、演劇を出来るようになる展開において、それぞれのキャラの心理変化がほとんど描かれてないこと。一話一話の流れが大切な連続TVドラマとは違うのだ。台詞の練習シーンや細かな脚本は良かっただけに残念です。それに無駄な部分が多くて、どこかに伏線があるはずだと深読みしようにも全て裏切られる・・・まぁ、上戸彩はよかったけど。
そんなこんなでオリジナルには及ばないものの、細かなところでいいシーンがありました。特に印象に残ったのが桃の姉(京野ことみ)がシュークリームの差し入れするところ。オリジナルにもアイスクリームの差し入れがあったし、女子生徒のリアクションが細かく演出されてたなぁ・・・
女のいやらしさを出さないと・・女よ、女
映画「櫻の園 −さくらのその−」(中原俊監督)から。
おじさんだなぁ、と思いながらも、
やっぱり、若い女の子の一所懸命の姿はいい(汗)。
この中から、未来の大女優が生まれるんだろうなぁ、
そんな視点で観てしまった作品である。
菊川怜さん扮する坂田先生が、
「稽古のときは、デビル坂野って呼ばれてたんだから」と
ピチピチの女子高生に、演技するシーン。
もちろん演劇作品はロシアのチェーホフ原作「桜の園」。
「ここは本気に助けてって言っているわけじゃないの、
女のいやらしさを出さないと・・女よ、女」・・と叫ぶ。
これには笑った。
そうなんだよ、女はいやらしいんだ・・と頷いた訳じゃない。
でも、インパクトあった台詞を、物語に関係なく選んだ。
このフレーズだけで、この作品を思い出せそうだったから。
「舞台立つの、すごく興奮するよ」の台詞もいいな。
でもどうして、若い女の子の作品って「桃」ばかりなんだろう。
映画「フレフレ少女」の主人公は「櫻木高校の百山桃子」、
愛読書は「櫻文庫」。今回の主人公は「櫻華学園の結城桃」。
なんとなくわかるけど・・ここまでしなくても・・(笑)。
全2件を表示