「麗しき女の園だが、原版よりも落ちる」櫻の園 さくらのその Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
麗しき女の園だが、原版よりも落ちる
総合65点 ( ストーリー:65点|キャスト:70点|演出:75点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
1990年版の「櫻の園」の再映画化なのかと思っていたが違っていた。そもそも新しく「櫻の園」が制作されたことすら知らなかった。どちらも映画監督は同じとはいえども別の話なので、題名を同じ「桜の園」にするのには違和感があって、「桜の園2」か何かにしてくれたほうが良かった。
興行収入的には凄まじいまでの大失敗だったようだが、作品の質的にはそこまでひどくはない。冒頭は悪い意味での名門女子高の幼稚な俗っぽい部分が多くてあまり気に入らなかったが、生徒が演技に魅せられ自分らしさをつかんでくるとだんだんと瑞々しさが出てきて良くなった。風景の撮り方も含めて、禁断の園の中に可憐な美しさがある。
だが評価の高かった1990年の原版よりは落ちる。それは少女たちの揺れ動く心の動きを透明に耽美に描いた前作よりも、その部分の描き方が弱いこと。そして少女たちを描きたいのか学校と少女の対立を描きたいのか、主題もぼやけている部分があって中途半端になっていることである。物語は上演の反対と許可とがあっさりと切り替わる部分が不明瞭。
出演者では、赤星真由子役の寺島咲が、転校生を案内するときには人の言われるままに生きて価値観をただ受け入れただけでかちかちの頭でつまらない存在だったのに、心のそこに秘めた心を開放していく過程、自我に目覚めていって表情も態度も変化するところが好印象。劇中劇の練習ではわざと下手な演技をしたりして演技力があったし、この作品における私の最優秀出演者。杏も本人のしっかりとした人柄の印象を生かした役回りで良い。主役の福田沙紀は平凡。学校の教頭と職員の人?の存在感は並以下。有力事務所のごり押しでの配役なのか、可愛くてもあまり演技がよろしくない出演者もちらほら。