「ブラッド・ピット最高傑作!」ベンジャミン・バトン 数奇な人生 モリさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラッド・ピット最高傑作!
2009年度アカデミー賞において作品賞、監督賞、主演男優賞ほか最多13部門にノミネート。『ソーシャルネットワーク』のデヴィッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演のファンタジー・ドラマ。80歳代の容姿で生まれ、年齢を重ねるたびに若返っていく数奇な運命の男を描く。
ある時計職人が戦争で息子を失った。失意の彼は、針が逆向きに回る時計をつくる。もし、戦争へ向かう息子を引き止めることができたら…。時間さえ戻せたら…。物語はこうして幕を開ける。
1918年のニューオーリンズに生まれたベンジャミン(ブラッド・ピット)は年老いた姿で生まれてしまったため、ショックを受けた父親に老人ホームの前に捨てられていく。幼いころから老人に囲まれて育ったベンジャミンは、周りの老人が次々とこの世を去っていくとともに早々と“死”というものと真剣に向き合っていく。
そして、運命の女性デイジー(ケイト・ブランシェット)との出逢い。男は年を取るたびに若返っていき、女は年老いていく。2人の年齢がぴたりと合うのは、わずかな時間しかない。この設定が、ただのラブストーリーに終わらせない。
ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットの若返りメイクと老けメイクの技術も素晴らしく、映画を盛り上げていく。
しかし、私がこの映画で最も印象に残ったのは、脇役であるがティルダ・スウィントン(『ザ・ビーチ』、『ナルニア国物語』、『フィクサー』)の演技であった。
この映画の最も切ないシーンは、なんといってもクライマックスのシーンだろう。死期が迫り、ニューオーリンズの病室で寝込むデイジーの部屋の中が水浸しになってしまう。日付は2005年8月、アメリカ南部をハリケーン・カトリーナが直撃し、ニューオーリンズ周辺は浸水してしまった。原作から舞台をわざわざニューオーリンズに移した背景には、ブラッド・ピットがハリケーンの被災者に多額の援助を行ったからだろう。ブラッド・ピットの思いが伝わってくる映画だ。